デニムに漆器、美容成分も! 株式会社 明治が「食品以外」のカカオの可能性に着目する理由
ーどういった商品に注目が集まっていますか。 晴山: デニムなど身に着けるものは注目度が高いと感じていますが、今はまだ商品化に至っていません。販売しているものでは、コースターが100%食品素材からできており、カカオの香りがすることに加え、コンクリートと同等以上の強度を持っているので、実際に手に取っていただくと驚かれる方が多いです。 また、漆器は外国の方にも興味を持っていただけます。ろくろ挽きの際に出る木くずとカカオハスクをアップサイクルする形で商品化しました。
ーカカオハスクを使うメリットはありますか。 晴山: カカオがチョコレートの原料だというのは強みだなと感じます。アンケートを取っても、チョコレート好きの方は多いですからその原料からできていると伝えると、興味関心を持ってもらえることが多いです。
世界初、カカオから抽出したセラミド
ー世界で初めて素材化に成功した「カカオセラミド」の特徴を教えてください。 本間: セラミドとは保湿成分であり、カカオから抽出されたのが「カカオセラミド」です。 一言でセラミドといっても種類があり、今回、カカオに含まれているとわかったのは、食品で活用されることが多い「グルコシルセラミド」と、植物にはあまり多く含まれない「遊離型セラミド」です。さらに、「遊離型セラミド」の中に、人が持つセラミドと同じ構造で、化粧品などに用いられることが多い「ヒト型遊離セラミド」が含まれていることがわかりました。
ー「カカオセラミド」の素材化は帝京大学と共同で行われたようですね。 本間: 以前から、別のプロジェクトで帝京大学の古賀仁一郎教授と一緒に研究を行ってきました。 古賀先生がセラミドの種類を測定する技術を開発されたということで、カカオを調べてみたところ、天然由来で、かつヒト型遊離セラミドという稀少なセラミドが、カカオの未活用部位に多く含まれているとわかったのが大きな発見でした。そこから素材化の技術開発に至りました。 この発見をいかにビジネス化し、カカオ産地に還元していけるかが今後の課題になってくると思います。 ー他国ではカカオハスクの再利用がほとんどされていないのですか。 本間: 一般的にチョコレートを作った残りのカカオは、捨てたり家畜の餌にしたりしているようです。一部には、カカオハスクを使ったお茶を提供している国もあります。 カカオ豆の生産量は世界で約500万トンです。そのうち日本に輸入されるのは、およそ5万トン。わずか1%にすぎません。この全世界500万トンのカカオ豆から発生するカカオハスクをさまざまな形でアップサイクルできたら、カカオの価値は大きく変わります。 弊社の技術や活動を日本全国、そして世界へ広げていくことで「ひらけ、カカオ。」はさらなる飛躍を見せてくれると信じています。 ー化粧品メーカーのアルビオンとパートナーシップを結ばれたのは、その第一歩ということでしょうか。 本間: アルビオンさんは植物由来の原料にこだわっており、自社で研究施設を持っていたり、サステナビリティを意識されたものづくりをされています。 カカオは植物ですし、アルビオンさんの「フローラドリップ」という商品も植物由来の濃密化粧液で親和性が高かったというのがあります。またマダガスカルの支援を行うなど共通点が多く、同じ価値観のもと、協業できるということで話が進んでいきました。 セラミドを使った美容系の商品を展開するとなると、どうしても弊社だけでは限界がありますので、化粧品メーカーさんと一緒に開発できるのはありがたいお話です。