「女の子は地元でいい」とあきらめないで 慶應女子大生が地方女子のためにシェアハウス運営
「地方から東京の大学に進学したい」と思っても、経済的な理由であきらめざるを得ない人は多くいます。特に女性の場合、防犯の面から家賃が高くなりがちだったり、「女の子は地元でいい」という周囲の意識の壁があったりもします。「地域格差や経済格差を解消して、地方の進学希望者を支援したい」。その思いで、上京して慶應義塾大学に入学した女子学生が団体を立ち上げました。 【写真】リフォームのビフォアー・アフター かなり老朽化していた台所も、新築同然のキッチンに
慶應義塾大学文学部3年の坂本悠愛さんは、大阪の下町出身です。埼玉県越谷市に暮らす親戚を頼って上京し、大学にもそこから通うことにしました。文学部の1年生が通う日吉キャンパス(横浜市港北区)までは2時間近くかかりますが、この親戚がいなければ、坂本さんの今はなかったと言います。 「私が育った町には、何となく『東京なんて無理』という雰囲気がありました。そもそも進学での上京を選択肢に入れていない友達が多く、高校の進路指導室にある関東圏の大学のパンフレットは、手に取る人がいないのでピカピカでした。私も埼玉に親戚がいなければ、東京での受験すらできなかったと思います」 とはいえ、長時間の通学はつらく、1年次の夏頃には生活に疲れてきました。もっと便利な場所で暮らしたい気持ちが募りましたが、首都圏の家賃は高額です。安く安心して住める場所がほしいと考えた坂本さんは、シェアハウスをオープンしようと、友達と5人で学生団体「MORE FREE」を立ち上げました。 「最初はグーグルのストリートビューで空き家らしき物件を探して、現地を見に行っていました。いきなり訪ねて、『ここって空き家ですか? 大家さんはいますか?』などと聞くので、完全に不審者扱いされました(笑)。怪しまれたり、怒られたりすることも何度もありました」 活動を始めてちょうど1年が経った頃、空き家を探していることを知った友人が、坂本さんに不動産会社を紹介してくれました。 藤澤正太郎さんが代表を務めるベンチャー企業「ヤモリ」は、「不動産の民主化」を掲げ、空き家の再生も手掛けています。 「藤澤さんに『シェアハウスを作りたい』と話すと、『じゃあ、やろう』と支援を即決してくれて、23区内の古い空き家を使えることになりました。これが2024年1月のことで、4月からの新入生にも住んでもらうには、もう時間の余裕がありませんでした」 坂本さんら団体メンバーが参加してのリフォーム作業は、急ピッチで行われました。 初期メンバーの一人である清藤心彩さんは、札幌市の出身。「シェアハウスのオープンまでは本当に忙しくて、いつもはそうそう休まないアルバイトも、さすがに休みをもらいました」と当時を振り返ります。その甲斐あって、3室を備えたシェアハウス「ハピネスト」は24年3月末に入居者募集を開始することができました。家賃は月3万~4万円で、光熱費を含めても5万円以内になるように設定しています。24年7月現在で、空室は1部屋のみと盛況です。