「女の子は地元でいい」とあきらめないで 慶應女子大生が地方女子のためにシェアハウス運営
「女性だから」という性別の壁を解決したい
セキュリティーなどを考慮するため、女子学生の家賃は男子学生に比べて高くなりがちです。学生向けの安い寮はあるものの、その多くは男子学生専用です。これは学生寮の設置当時、女子学生が非常に少なかったことの名残。慶應義塾大学にも寮はありますが、設備の整った物件は賃料が高く、坂本さんが入りたかった家賃2万5000円の寮はやはり男子専用でした。 「女の子に学歴は不要」といった風潮が都市部に比べて強いことも、地方の女子の進学率に影響しているかもしれません。また、近年では進学などで都市部に出る人が減少しており、新たな土地での可能性が奪われる「移動格差」も取りざたされるようになっています。 坂本さんは入学して間もなく、地域格差を強く意識することがありました。 「ここに来られる学力があったはずの私の高校の同級生も、みんな地元で進学しました。MORE FREEでのヒアリングでも、地方から上京した学生の苦しい生活が見えてきました。アルバイトを頑張れば、何とか東京で大学生活を送れるかもしれません。でもそれを前提に上京すると、授業とアルバイトだけで1日が終わってしまいます。一度入った部活をやめてしまった学生もいるし、留学をあきらめた学生もいます。せっかく東京に出てきたのに、いっぱい、いっぱいになってしまって、やりたいことに打ち込む余裕がないのです」 さらに坂本さんは「地方の受験生は、自分が『知らない』ということ自体を知らない」と言います。 「地方の公立高校では、部活動や学校行事が優先されて、気づけば受験期に突入しています。時間のない中で、自分が知らない情報にリーチするのはとても難しいことです。例えば、慶應義塾大学は奨学金がとても多い大学ですが、私も入学するまで知りませんでした。JASSO(日本学生支援機構)の奨学金しか知らない人も多いのではないでしょうか」 「経済格差」「移動格差」を含む「地域格差」を、女性だからという「性別の壁」がさらに拡大させ、進路の選択肢を狭めている。坂本さんたちは、この課題を自分たちの力で解決したいと考えています。