にしおかすみこの認知症の母、自らの糖尿を気にしてダウン症の姉とダイエットを考える話
糖尿病の人は認知症になる可能性が高くなる。そんなことを国立国際医療センターの「糖尿病情報センター」など、多くの医療機関でも告知し、糖尿病ケアの重要性を訴えている。 では、すでに認知症の人で糖尿病でもある人はどのようにケアしていけばいいのか。糖尿病は、食事療法のみならず、インスリン注射や投薬などがある。つまり「忘れてはならないこと」が多いのだ。 【写真】「にしおかア~すみこだよっ」のときのにしおかさん 認知症の母、ダウン症の姉、酔っぱらいの父(パパクソからパクソと呼ばれている)との同居を綴るにしおかすみこさんの連載「ポンコツ一家」、34回は糖尿病でもある認知症の母についてお伝えしている。認知症ではあるけれど、突然俳句を詠んだり、美しく花を活けたり、昔のことをとてもよく覚えていたりするにしおかさんの母親。糖尿病の病院に行ったある日、もうそろそろインスリンを打たなくてもいいって先生言ってたよね? という内容を聞いてきた……。 にしおかさんはどう返すのか。
「言ってない」
「イテッ……ツゥゥゥ。ママとしたことが今日は痛点に当たった。お腹にこんなに肉があっても痛いときは痛いんだよねえ。クゥゥ。あ~毎日、一生しなきゃいけないかね。ねえ、この間診察行ったとき、先生、そろそろやらなくてもいいって言ってたよね? すみ? 聞いてる?」と。 「言ってない」と返すと、 「別にあんたに聞いてない!」とピシャリとした声が飛んでくる。……私が、ご所望のすみこだろうがと、イラっとしながら味噌汁を作る。パサッと乾燥ワカメを入れたら、見る見るうちに小鍋が樹海のようだ。入れ過ぎた。中の豆腐が迷子になっている。 程なくして、また母の声が聞こえてくる。「ねえ、これ見てくれない? 今日から朝昼晩の食事のメモを取って、これだけちゃんと気をつけてるから、もう注射要りませんって、先生に直談判しようと思って。すみ? 聞いてる?」と言うので。私は洗いもの途中の濡れた手のまま、仕切りカーテンを頭からくぐり、母の差し出したメモ紙の端をつまんで見る。 『朝5時。ジャムパン1斤 湯で流し込む 注射済』 ……いつの朝? パン1斤? 湯で? 老人が? もはや一芸だ。母よ、今朝はまだ何も食べていないだろう?