にしおかすみこの認知症の母、自らの糖尿を気にしてダウン症の姉とダイエットを考える話
次の日。
次の日。早朝仕事だったので、日の出前に家を出た。3人とも寝室に収まっているのは確認した。 夜20時頃だったか。帰宅すると、ベトベトのひしゃげたアイスの箱が冷蔵庫。鮨の空パックとコロッケの入っていた袋がゴミ箱。居間で母と姉が崩れたスイカを分けながら食べていた。 「あら、おかえり。昨日さ、パクソが酔っぱらってやけくそで、自分で買ってきたもん全部ゴミ箱に捨てたんだよ。全く! 食べ物をだよ! 世の中食べられない人だっているのに、信じられない! バチ当たりが!」 ……拾ったのか。 そして少し緩んだ顔でこう言う。「ねえ、ママ、夢があるのよ。お姉ちゃんとふたり、どうにか苦しまずして10キロずつダイエットできないもんかねえ。このお腹見てよ」と。隣の姉のTシャツをめくり、ポッコリお腹をポンポンと叩く。 そして「ねえ、あんたから痩せるように言ってくれない? ほら、お姉ちゃん、すみちゃんが言うことなら聞くもんね」と。
「ダイエットする?」
私が「ダイエットする? まず甘いもの減らさないと。ご飯にこんにゃく米混ぜてみる?」と言ったら、 姉が「あれ~? あれあれ? どうしよう」と急に慌てた素振りを見せ「すみちゃんのいってることが、きこえないの! これホントなの!」と。自分の耳を引っ張ったり、水を抜くような仕草で頭を振ったりして、「オーマイガー」と肩をすぼめ両手を広げる。 「……全然聞こえない? じゃあダイエット無理か」 「うん! ぜんぜんきこえない! ダイエットはあきらめなの~」 一番しっかり聞こえている。 家族に、私の声はいつまで届くのだろう。 【次回は7月20日(土)公開予定です】
にしおか すみこ(お笑いタレント)