日ハム新庄監督の狙いは何だったのか…異色の沖縄キャンプの第1クールをひもとく……アイデア練習の裏にある育成と意識革命
日ハムOBで阪神、中日などでコーチを務めた評論家の高代延博氏は、BIGBOSSキャンプの狙いをこう分析して評価した。 「新庄監督は、野球に何が重要なのかがよくわかっていると思う。初日から走塁指導をしていた。試合後のミーティングで反省するのは、8割、打つ打たないではなく、走塁の話。なぜあそこで三塁にいけなかったのかなどの走塁のミスを指摘することが多い。それは工夫と意識を変えることで修正することができるからだ。しかも、それが得点力につながっていく。そこのところを新庄監督はよくわかっているのだろう」 高代氏が注目したのが、初日の走塁練習で新庄監督が指導した場面だ。 咄嗟に考えついた助走付きの三塁タッチアップ方法は、ルール上アウトだったが、2種類のスタート方法を提案。レフト前ヒットを想定した本塁突入では、三塁ベースを蹴った際に膨らまずに三本間を結ぶライン上を直線的に走り込む走法を「そう走れば外野手の送球が当たるから」と自らも実践して指示した。 高代氏は、「本塁へ真っ直ぐ突入することは、理想形だ。三塁を回るときにスピードに乗っていると、どうしても膨らんで、なかなか実践できないが、膨らむと外野手も内野手も送球がしやすくなる。最短距離を通ることで時間も短縮できる。またタッチアップも低く構えるよりも高い姿勢でいた方がスタートが切りやすい。新庄監督の指摘は正しい」と言う。 高代氏が注目した、もうひとつのポイントは、武井氏の臨時コーチだ。 「キャンプで必要なことは体力強化。故障者を出さず、ペナントの終盤も戦い抜く体力をチームとしてつけることが重要になってくる。まして日ハムは若いチームで、新庄監督には、勝ち負けよりも育成という部分が期待されているんだと思う。それには個々のフィジカルの強化が必要で、武井さんを招いた狙いもそこにあるのだろう。今後も臨時コーチを招くそうだが、報道で見る限り、五輪のハンマー投げの金メダリストの室伏さんなど、手を変え品を変え、体力強化を重視しているのがよくわかる。臨時コーチにはマンネリを打破して選手の意識を変えるという効果もある。Bクラスに低迷しているチームは、意識改革も必要な部分。新庄監督が行っていることは、チームを強化するために重要なポイントをはずしていない」 武井氏が指導した“百獣の王トレ“では、効率のいい歩き方、走り方、故障を防ぐトレーニング方法などが披露された。マスターズ陸上の100mで11秒台を出したほど、48歳で肉体を維持しているが、「1日、110秒のトレーニング」で済んでいるそうで、新庄監督のラブコールに答える形で、その秘伝を初披露したという。 講座の前と後でタイムを計測した20m走では、ほぼ全員が0.1秒速くなっていた。走力アップは、走塁にもつながる部分。そして基礎体力強化こそが、育成の根幹である。 話題先行のように見えて新庄監督は、しっかりとした目的をもって、今のファイターズに必要なことを実行しているのだ。特に若手育成をテーマにしているからこそ3日間で2度も2軍キャンプに出向いたのだろう。 異色のキャンプの第1クールが終わった。第2クールでは、6日に紅白戦、8日には阪神との対外試合が組まれるなど早くも実戦モードに突入することになる。