日ハム新庄監督の狙いは何だったのか…異色の沖縄キャンプの第1クールをひもとく……アイデア練習の裏にある育成と意識革命
初日にルーキーの長谷川にブルペンで「ペイペイドームのつもりで投げなさい」と声をかけ、この日は8球だけだったがバットを持たずに打席に立ったのは、いずれも実戦を意識させようとしたもの。 各社の報道によると、実際、長谷川も、その言葉の意味を「実戦を意識して打者が立っていると思い込んで投げることで1球、1球の意識が変わってきた」と受け止めていた。 実戦を意識させる最たるものが、バーチャル打撃マシンの導入だった。とんねるずの人気番組内コーナー「リアル野球BAN」で使用されているマシンで、実際に投手が投げている映像が映り、そのタイミングでボールが飛び出してくる。ストレートの速度調整だけでなく、数種類の変化球をコンピューターで制御できる優れもの。そして新庄監督が選んだ投手は、パのライバルチームのエースではなく、なぜか阪神の藤浪だった。 通常のマシンとは勝手が違ったのか「リアル野球BAN」に何度も出演していた杉谷もなかなかタイミングが取れず、まともに打球を打ち返すことができなかった。「ものすごく速かった」と面食らっていた。 映像は、ソフトバンクのモイネロ、藤浪、そして阪神時代に二刀流で投手を経験したことのある新庄監督の3種類が用意されている。メジャーのランディ・ジョンソン、ペドロ・マルティネスという“レジェンド2人“をリクエストしたが、権利関係で使用できず、藤浪、モイネロに落ち着いたという。各社の報道によると新庄監督は、藤浪を選んだ理由をこう説明した。 「藤浪君はいろんなところへ(ボールが)いくピッチャー。藤浪君を打てたら誰も怖くない」 藤浪は150キロをゆうに超えるストレートと右打者に抜けてくるような荒れ球で知られる。緊張感を持ち、その恐怖心に打ち勝ち「踏み込む」という打者にとって最も必要なものを実戦さながらに意識させるには最適だと判断したのだろう。 打撃練習で新庄監督は「試合のように振れ」との指令を出し「打球に勢いが出てきた。後ろで見ていてうれしくなった」と手応えを感じていた。 新庄監督が求めているのは意識改革である。 昨年Bクラスに低迷したチームは「覇気がない」「積極性がない」という批判の声を浴びた。だが、武井氏の講座では、新庄監督が「ふだん質問しないイメージがあったが、みんなバンバン聞いていた。2、3人はノートを持っていた」と驚くほどの積極性が見られた。武井氏も、講習後にSNSのDMなどで追加質問が殺到したことに驚いていた。 今後も、臨時コーチを招く予定だが、新庄監督は、その狙いを「野球選手、OBじゃないほうが、選手は飽きない。耳がこう(ダンボに)なる」と説明していた。選手の積極性を引き出そうとする仕掛けが、さっそく効果を出したと言える。