新型コロナ検査で注目の「抗原」「抗体」とは? 免疫の仕組みから知る
「抗原検査」と「抗体検査」そして「PCR検査」の違い
これまで見てきたように、免疫システムが抗原(異物)を排除する過程の中で抗体が登場するまで、長い道のりでした。抗原と抗体が出そろったところで、検査の話に移りましょう。抗原検査も抗体検査も、抗原抗体反応を利用した検査です。それぞれ何を見ているのでしょうか? PCR検査と併せて、表にまとめてみました(表1)。
まず抗原検査と抗体検査の2つを比較するために、今春の感染拡大初期から使われているPCR検査の特徴を見ていきましょう。この検査で分かるのは、「いま体内にウイルスがいるかどうか」です。「PCR」とは、polymerase chain reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略で、DNA・RNAなどの遺伝物質の特定の領域を増幅するための化学反応のことです。ターゲットのウイルスにしかない配列だけをPCRで増やすことで、サンプル中にウイルスが存在するかどうかを確認します。 新型コロナウイルス感染症においてPCR検査は、ウイルスの存在を検知する能力が最も高く、確定診断にも使われます。とはいえ増幅に必要な最低限の量の遺伝物質が採取できないとウイルスを検出できず、体内のウイルス量が最も多いタイミングの検査でも8割程度の感度(※)、それ以外のタイミングではさらに感度が下がると推定されています。そのため、「陰性=感染していない」とは言えません。逆に陽性判定の場合は、体操の内村航平選手の報道にあった「偽陽性」のようなケースもゼロではないものの、本当に陽性である確率は非常に高いです。なおPCR検査では、検出されたウイルスが感染力を持つのかどうかまでは分からず、例えば回復後の検査などでは、すでに感染力を失ったウイルスの残骸を検出してしまうこともあります。 (※)感度…真の陽性を検査で陽性と正しく判定できる割合
続いて抗原検査ですが、こちらも「いま体内にウイルス(=抗原)がいるかどうか」を調べています。最も身近な抗原検査といえば、鼻を綿棒でグリグリするインフルエンザウイルスの検査かもしれません。 あらかじめ用意したウイルスにくっつく検査用の抗体と、鼻や喉の奥などから採取したサンプルを反応させます。サンプルの中にウイルスがあれば、検査用の抗体と抗原抗体反応を起こすので、ウイルスがあることが分かります。長所は検査結果がすぐに分かる点、短所はウイルスの存在をキャッチする能力がPCR検査に比べると低く、PCR検査よりも本当の感染者を多く見逃すであろう点です。 つまり陰性になった場合、PCR検査以上に「本当に感染していないかどうか疑わしい」ということになります。ただし、仮に陽性と出た場合、本当に陽性である確率は高いので、新型コロナウイルスの場合、ウイルス量が多いとされる発症から9日目以内の有症状者については、抗原検査での陽性結果はそのまま確定診断として用いられます。(2020年11月30日現在)