絶対に死ぬなよ…母のため、4度断った監督の座「できないよ。義理と人情で生きてきた」 話の肖像画 元プロ野球選手・張本勲<27>
監督をやらなかったのは球界の七不思議って言われてますが、一番の理由は母(順分(スンブン)さん)の存在です。生前女房に言ったそうです。「絶対に監督をさせちゃだめよ。やったら死ぬよ」って。ものすごく反対していたそうです。私の性格を知っている。打てないと眠れぬ夜を過ごすほど突き詰める性分ですから。それに監督というのはそんなに魅力がないですよ、束縛されて。私は自由気ままがいい。ま、もろもろあって、人それぞれでいいんじゃないかな。これまでの決断に後悔はないですね。
《コーチとしての存在…》
臨時コーチは巨人、中日、西武などでやったけど、直接には森祇晶さんからありました。長嶋茂雄さんが巨人監督に復帰した5年です。その直前、森さんら数人で韓国を旅行した。飛行機の中で森さんから「今度巨人の監督をやるんで打撃コーチを頼むぞ」って。ほぼ決まりだということだったけど、いろんな事情で潰されたらしい。
王(貞治)からは非公式でね。2人がお世話になっていた財界のある人から「今度、ワンちゃんが監督やるから」とコーチの話があった。王も直接、私に言えなかったのかな。7年にダイエー監督に就任するときです。それ以前、長嶋さんにも断ったことがある。王を受けたら長嶋さんに義理がたたない。そうでしょ。
その年、ロッテで広岡(達朗)さんがゼネラルマネジャーをやっていた。ヘッド兼打撃コーチで誘われましてね。監督がボビー・バレンタインだと聞いてお断りしましたけど。最近、広岡さんとは会ってないけど、よく電話でやり取りしてますよ。92歳です。〝口が元気〟で、長くて切れない(笑)。(聞き手 清水満)
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