13年ぶりのVを浦和レッズにもたらした「メンタル力」
前半途中で無念の負傷交代を強いられ、ベンチで戦況を見つめていた浦和レッズのMF宇賀神友弥は、勝利を信じながら一抹の不安を募らせていた。 「正直、いままでの流れだと負けゲームだった」 YBCルヴァンカップ(旧ヤマザキナビスコカップ)決勝。J1セカンドステージと年間総合順位の両方で首位を快走するレッズが、下馬評では断然優位と見られていた。2週間前に同じ埼玉スタジアムで対峙したリーグ戦では、レッズが4‐0のスコアでガンバを一蹴している。 しかし前半17分に先制したのはガンバだった。1トップのアデミウソンが、約60mものドリブル突破からゴールを陥れる。DF槙野智章が強引にドリブル突破を図り、不用意にボールを失ってはカウンターを発動される。レッズの典型的な失点パターンは、これまでなら“崩壊”への序曲でもあった。 振り返れば、勝てばJ1優勝が決まった2014年11月22日も、チャンピオンシップ準決勝を戦った昨年11月28日も、そして天皇杯制覇をかけた今年元日も先制を許し、取り返そうと前がかりになった背後を突かれてはさらに失点を重ねて一敗地にまみれてきた。相手はくしくもすべてガンバだった。 しかし、冒頭で記した宇賀神が「負けゲームだった」と過去形で語ったように、この日のレッズは違った。アデミウソンと巧みに体を入れ替えられ、ドリブルを開始されるきっかけを作ったDF遠藤航が言う。 「自分の思うような守備ができない、あるいはちょっとしたミスで失点を招いてしまうのは、センターバックならば必ずある。大事なのは失点の後に自分のなかでしっかりとメンタルをコントロールして、ショックを引きずらないこと。これ以上は絶対にゴールさせてはいけないと、槙野君と森脇君と何度も話しながらプレーしていた」 積極的な攻撃参加を武器とする3バックの左右、槙野および森脇良太に自重を促しながらリスクマネジメントを徹底したのが遠藤ならば、攻撃を差配するボランチの柏木陽介は意図的にボールを落ち着かせる時間を作っては、展開に応じてアタッカー陣を制御した。 「味方のサポーターからは『急げ』という感じでブーイングを受けるシーンもあったけど、オレはそこであえてタメを作ることが必要だと思った。いつも急いではボールを奪われて、カウンターを食らうシーンが多かったので。必ず1点は取れる、という自信があったし、それができた点でチームとして成長したし、個人的にもどんどんよくなっているのかなと」 耐えて、我慢して迎えた後半31分。言葉通りに柏木が同点弾をアシストする。利き足の左足から放たれた右CKは鋭い軌道を描きながら、ニアサイドに陣取った相手選手の頭上を越えてから急降下。直前に投入されたばかりのFW李忠成の頭と鮮やかにシンクロした。