13年ぶりのVを浦和レッズにもたらした「メンタル力」
延長戦を含めた120分間を戦っても決着がつかず、突入したPK戦。5人のキッカーと対峙した過程で、今度は守護神・西川周作が自らを律する。読みの鋭さを前面に押し出すあまりに先に右へ跳び、2人目のMF今野泰幸にど真ん中に決められたシーンに思わず天を仰いだ。 「次は真ん中のまま先に動かないと、自分のなかで決めました」 読みの鋭さ以上に、反応の速さには自信がある。先に動かないことが4人目のルーキー、FW呉屋大翔には逆にプレッシャーとなったのだろう。左を狙った呉屋のPKは、とっさに伸ばされた西川の右足に弾かれた。対するレッズは5人全員が成功。サンフレッチェ広島から加入して3シーズン目で、初めてなし遂げたPKストップが勝利を手繰り寄せた。 13シーズンぶり2度目となるYBCルヴァンカップ制覇。レッズが獲得したタイトルは2007シーズンのACL以来で、国内三大タイトルに限れば2006シーズンの天皇杯以来、実に10年ぶりとなる。 あと一歩で頂点に届かなかった負の歴史を、乗り越えられたのはなぜなのか。 日本代表の一員としてワールドカップ・アジア最終予選を戦った南半球のオーストラリアから、柏木とともに12日に帰国したばかりの西川は「メンタルだと思う」と力を込める。 「チームに合流したときも、みんなの肩の力がしっかり抜けていると感じられた。こういう試合でも緊張感とリラックス感が同居した、本当にバランスの取れたメンタル状態で戦えたし、なおかつ120分間を通して相手よりも戦う気持ちが強かったことが結果に表れたと思う。このチームはひとつタイトルを取れば、いい意味で調子に乗っていける。今後の戦いへ向けて最高の弾みになると思う」 厳しいアジア予選を勝ち抜いてリオ五輪切符を勝ち取った、U‐23日本代表のキャプテンを務めた新加入の遠藤。ハリルジャパンでの出場機会を増やしている柏木と西川。日の丸を背負った戦いで得た経験が還元されていることに加えて、肋骨骨折を押してフル出場したキャプテンのMF阿部勇樹をはじめ、チームの誰もが「二度と同じ過ちを繰り返したくない」と念じ続けた今シーズンの軌跡が“心”を成長させた。