ゴジラ-1.0と「君たちは~」アカデミーW受賞の瞬間、各国の記者から大歓声が起きた…沸いたのは日本だけじゃない 現地で実感した多様化と日本映画への期待
「世界最大の映画の祭典」とされる第96回アカデミー賞の発表・授賞式をアメリカ・ハリウッドで取材した。長編アニメーション賞「君たちはどう生きるか」と視覚効果賞「ゴジラ―1.0(マイナスワン)」の日本作品W受賞に沸いたのは、日本だけではなかった。世界中のメディアが集まった現地の記者会見場でも日本映画は人気で、発表の瞬間は大歓声に包まれた。 「ハリウッドにはまねできない」ゴジラが視覚効果賞を受賞した理由
かつてアカデミー会員は白人男性が多数を占め、「アメリカの映画賞」の意味合いが強かった。しかし偏った会員構成が批判され、アカデミー賞は近年、女性や海外にルーツを持つ会員の割合を増やした。これも日本作品に追い風となったようだ。 そして最も注目される作品賞は、原爆を作った男の葛藤に迫るアメリカ映画「オッペンハイマー」に輝いた。その原爆によって生まれた「ゴジラ」にも、記者たちの関心が向けられた。オスカー像を手に受賞者たちが語る記者会見は、原爆や戦争を巡って発信する場ともなった。(共同通信=加藤朗) ▽オーラ!、チャーオ!、ザ・ヘロン 記者がアカデミー賞を取材するのは昨年に続き2度目だ。映像や写真を撮るのではなく、記事だけを書く〝ペン記者〟は、授賞式会場ドルビーシアターに隣接したホテルの記者会見室に閉じ込められる。テレビ番組に合わせて次々に発表される受賞者をモニターで眺めていると、オスカー像を受け取った受賞者がそのまま記者会見室を訪れ、質疑応答が繰り広げられる。
会見場に入って取材の準備をしていると、大柄な男性から「オーラ・アミーゴ!」と声をかけられた。メキシコ紙の記者だ。昨年の授賞式以来、1年ぶりの再会で「元気だった?」「どんな映画を見た?」などとひとしきり盛り上がる。 「チャーオ!アキーラ!!」と筆者の名を呼ぶ陽気なあいさつはイタリアの通信社記者。開口一番「『ザ・ボーイ・アンド・ザ・ヘロン(君たちはどう生きるか)』はすっごく良かった。長編アニメ賞は間違いない」と太鼓判を押した。隣の席にはスペイン大手紙ムンドの記者。「スペインの作品もアニメ賞候補だが『ザ・ヘロン』は当選確実だ」とまじめな顔で言う。 ▽素っ気ないアメリカ、しゃべるラテン系 アカデミー賞は、記者会見場に集まった記者からも多様性が感じられる。地元アメリカの記者は、あいさつしても忙しそうで素っ気ない。欧州メディアの記者は、母国との時差の関係かのんびり作業している印象だ。なぜか私の周りはラテン系の記者たちばかり。彼らは逐一ボケとツッコミを繰り返しながらよくしゃべり、情報交換をする。「ゴジラはむちゃくちゃ格好良かった」「子どもと3回見に行ったよ」「3回見た?スピルバーグと同じやん!」