コクヨの「キャンパスノート」に隠された「ある工夫」
軽いノートや小さなノート、フラットなノートが出た理由
その後、太田さんに紹介いただいた現役の東大生の方にヒアリングをしたり、ノートを見せていただいたところ、本当にきれいでわかりやすいノートを作られていました。 では、どうすればそんなノートが取れるのかを考え、浮かんだのがドットを打つことでした。 各罫線に等間隔にドットがあることで、文頭もきれいに揃えられるし、図や表を描くときもその点を辿っていけばきれいに描けます。 ドットによって東大生の方が自然にされていたことを再現できるのでは、と考えたんです。実際、学生の方に高い支持をいただいて、大ヒットになりました。 5色の表紙で5教科で色分けして使えるタイプのものも出しています。5冊パックになっていたり、3冊パックになっていたりするものを、よく購入いただいています。 大学ではデザイン系の学科で学びましたが、広く一般の方が使う日常的な商品に関わりたいと思っていました。しかも、小さなもの。それで文房具メーカーを選びました。 売れている数を考えると「キャンパスノート」は影響力の大きな商品。責任の重大さを強く感じながらも、新たな取り組みに挑んできました。 '15年に世に送り出したのが、黒を基調にした表紙の「大人キャンパス」でした。従来品は社会人の方にもたくさん使われていますが、もしかするとカラフルな色はそれだけで使う障壁になっているのでは、と考え、開発した結果、好評をいただきました。 '17年には、軽いのに書き心地がなめらかな「スマートキャンパス」を発売しました。中の紙1枚1枚が「キャンパスノート」よりも薄く軽くできています。 「学校に持っていくカバンが重い問題」という社会問題に対し、少しでも負担を減らしたいと考えました。 '21年には、コロナ禍でオンライン授業やオンライン会議が増え、パソコンを置いているとノートが置けないという「机のスペース問題」に対応できるよう、ハーフサイズのノートを発売しています。 '23年には「キャンパス フラットが気持ちいいノート」を発売しました。見開き性を究極まで追求したノートで、ノートの綴じ部分にも文字が書けるんですが、実はスマホでノートを撮影する学生から高い評価をいただいています。撮影する際に影や歪みができないんです。 今はノートを全部持ち歩くのではなく、スマホで撮影した必要な部分だけを持ち歩くんですね。手で押さえなくても真っ直ぐフラットに開くノートだと、撮影がしやすいんです。 デジタルとの組み合わせも、これからの進化の一つのテーマだと考えています。
上阪 徹(ブックライター)