フィアット600 詳細データテスト 500より増した実用性と快適性 フィアットらしい元気さは不在
走り ★★★★★★★☆☆☆
今回のテストは、ステランティスのEVが、最新のゼロエミッションパワートレインのハードウェアを得て、どれくらい改善しているのかを測ることができる機会でもある。 グループの第1世代にあたるバッテリーとモーターを積んだシトロエンe-C4Xは、今回のフィアットとほぼ同じ重量だったが、0-97km/hは10秒をやっと切るくらい、48-113km/hは8.8秒だった。対する600eは、ドライコンディションで8.8秒と7.7秒だ。 つまり、第2世代に入ったEVコンポーネンツは、たしかに進化を遂げている。とはいえ、特別エネルギッシュさを売りにできるようなEVというわけでもない。ほとんどのライバルが、これより速いと言ったほうがわかりやすいか。 しかし、もっと残念なのは、このモーターのパワーデリバリーの設定だ。それに関してはフィアットに限ったことではなく、系列ブランドにも共通しているのだが。 600eに設定される走行モードはエコ/ノーマル/スポーツだが、先代モーターが発生した132psを上回るのはスポーツのみ。つまり、より元気な走りとドライバビリティ改善を求めるなら、自然とほかのモードは除外される。 さもなくば、スロットルペダルをキックダウンスイッチが効くまで踏み込むことになるが、その際の挙動はやや乱暴に感じられた。ノーマルモードで走らせた場合、80km/hを超えると非力さを覚えるかもしれない。 エネルギー回生の操作はきわめてシンプルで、タッチは軽いので、EV以外からの乗り換えがしやすい。調整パドルなどはなく、トランスミッションにBレンジがあるだけで、スロットルオフでのエネルギー回収をごくわずかなものからほどよいレベルに引き上げてくれる。 そのため、ワンペダル運転的なモードはない。そうなると、ブレーキペダルのプログレッシブな効き具合を当てにしたくなるが、その点ですばらしく成功しているとはいえない。しかし、スロットルを抜いた際にコースティングを効かせて、進む勢いを殺したくないなら、このセッティングが気にいるだろう。それも含めて、調整が効けばなおいいのだが。