フィアット600 詳細データテスト 500より増した実用性と快適性 フィアットらしい元気さは不在
使い勝手 ★★★★★★★☆☆☆
■インフォテインメント 600eは7.0インチのデジタルメーターパネルと10.3インチのUコネクトことタッチ画面式インフォテインメントシステムが標準装備。奮発して最上位のラ・プリマを選べば、オーディオは4スピーカーから6スピーカーにグレードアップし、純正ナビも加わる。 いずれのシステムも、スマートフォンのミラーリングはワイヤレス。少ないながら実体ショートカットが備わるので、車載システムとミラーリングモードの切り替えは簡単で、テスターはほとんどが自身のスマートフォンを繋いでナビやオーディオを使っていた。 エアコンや音量調整、オン/オフボタンは実体式なので、使い勝手はトップレベル。とはいえ、レーンキープアシストを切ったり、キャビンのプリコンディショニング設定などするのはタッチパネル経由で、メニューの操作回数は理想よりちょっと多い。 純正ナビを使うなら、目的地の音声認識はかなり正確だ。ただし、充電場所の選定はもっと細かくしてほしいところだが。 ■燈火類 LEDライトは標準装備で、自動減光機能も備えるが、やや反応は遅い場合がある。手動のレベル調整は、ハイビームのもっとも明るい部分を修正することができる。 ■ステアリングとペダル ドライビングポジションはやや高めだ。フットウェルは広めで、ペダルは位置も間隔もバッチリで踏みやすい。手動式のステアリングコラムは調整範囲が広い。
操舵/安定性 ★★★★★★☆☆☆☆
25年前のフィアットは、走りにダイレクトさとシンプルさがあり、ありそうもないパッケージで存分な楽しみをもたらしてくれるコンパクトカーを生み出す能力があった。もちろん現在は、かつてほどハッチバックが売れない試練のときだ。とはいえ、600eは、フィアットがどのような狙いでクルマを仕上げるかが、かつてとどれだけ変わったかということをまざまざと示した。 フィアットがいま目指しているのは、現在の生活や都市の環境への適合性だ。それは運転が楽で、ドライバーに多くを要求しないクルマ、取り回しにも快適性全般にも優れたクルマ、ただし特別印象深かったり、個性的だったり、俊敏さや楽しさを追求しないクルマ、ということになる。 サスペンションはほどほどにソフトなフィーリングで、トラベルは長め。ペースは一貫しているが、やや冷めた感じ。グリップレベルはそこそこ高く、安心感あるバランス。おそらくスモールカーに期待する以上の無茶なコーナリングをしてみると、そのプライオリティがとくにはっきりする。 一般的には、垂直方向の入力に対し、のた打ったり過剰に波打ったり、路面の状態以上にピッチングしたりすることはない。しかしあらゆる点で、600eは快適志向だと感じさせる。乗員の気分を盛り上げるのではなく、とにかく穏やかに乗っていられるよう仕立てられたクルマだ。 スタビリティもしっかりあり、峠道のようなところでも高速道路でも、変わらず落ち着いた走りっぷりだ。ところが、ラテン系の小さなクルマにありがちな活発さやバランス、大胆さは、まったく持ち合わせていない。