服役8回の元ヤクザが出所者の更生を支援 「人生のどん底」から抜け出すきっかけ探る
延べ14年間を刑務所で過ごした元ヤクザ。そんな生き方だからこそ、理解できることがある。一般社団法人「チャンスサポート」(大阪市城東区)で代表を務める川中正喜さん(49)。刑務所を出所した人や少年院を出た若者らに宿泊場所や食事を提供し、就労支援を行っている。かつて川中さん自身も味わった「人生のどん底」。そこから抜け出すきっかけを、手を取り合って探している。 【写真】やんちゃだった中学時代、リーゼント姿の川中さん ■顔にタトゥー、半グレ仲間から拉致… 「ごはん、食えてるか?」 「仕事はなんとかなりそうか? ゆっくりやったらいいで」 大阪市内のマンションにある「自立準備ホーム」。非行少年だけでなく、親からの虐待、自傷行為(リストカット)、市販薬のオーバードーズ(過剰摂取)など、さまざまな問題を抱えた若者たちが身を寄せる。川中さんは入居者一人一人に声をかけ、コミュニケーションを欠かさない。 「半グレ」グループのメンバーだった少年は、顔にタトゥーを入れていた。川中さんは自身が経営する飲食店で接客させ、毎朝店先を掃除してもらった。「見た目はどうしても怖いから、ご近所さんは気分がよくなかったと思う。だから少しでも前向きな姿を見てもらいたかった」 本人にその気があっても社会内更生は難しい。矯正施設では物理的に遮断できた過去の交友関係や生活習慣を、すぐリセットというわけにはいかないからだ。 「ホテルに監禁されてます。助けてほしいです」 ある日の夜、川中さんのもとに、サポート中の少年から連絡があった。かつて所属していたグループの仲間から拉致されたのだという。川中さんは鉄板入りのベストを着用して大阪ミナミの現場ホテルへ。到着したときには少年一人だけが残され、他のメンバーはすでに立ち去っていた。少年の体には殴られたとみられる傷の痕があったという。川中さんは「これまでやってきた悪さには、自分でけじめをつけないと」と険しい表情で語る。 ■支援に必要な「適度な距離」 ある少女は寂しさを感じるたびに市販薬を乱用し連絡がつかなくなる。自宅を訪ねると、意識朦朧の状態。それでも受け答えができると確認すると、川中さんは飲料水を置いて部屋を出る。ずっと寄り添うことはしない。オーバードーズを繰り返すのは川中さんを呼び出すためだと知っているからだ。「支援をする中で、僕に依存してしまう子もいる。でもそれでは立ち直れない。自分だけで気分をコントロールする術も学ばないといけない。適切な距離感が、長い支援には必要」