凝縮された「真剣度100%」9分間…井上尚弥は「LEGEND」で圧倒した比嘉大吾とのスパーで何を証明したかったのか?
現在、WBA、WBOの8位にランクされているが、現時点では、井上への挑戦資格がないという現実も突きつけられた。 「見ての通り。今は(勝つのは)厳しい状態。試合になれば調整も違うとは思うが、今日の内容だと厳しい」 急な対戦オファーで比嘉の体重は60、61キロだった。本来の試合なら減量に入っていく段階でも食事を取ったためベストの状態をキープできずにリングに上がった。準備不足の面もあった。それらの要素を差し引けば、いつかくる“未来カード”へのヒントや収穫がなかったわけではない。 「同じ距離感で、パンチの質、強さは見えた。それにもっと大きいと思っていたが、身長が小さいなと。上手さはある。12オンスでパンチも見られていた。でも、次に自分がいけないところではないなあと思った。今後は自分次第」 再挑戦への野望の灯は消えていない。 「自分は世界ランクに入っているし、やらないといけない相手。そうなったら、お互いもっと最高の状態で体重を落としての勝負になる。スパーよりももっといい試合になる」 井上も、そんな比嘉に心優しいエールを送った。 「パンチは前にスパーしていた頃の印象と変わらないが、意気込みは感じた。これからの成長具合では、自分もウカウカしていられない。比嘉がそういう立ち位置にきて(世界の)ベルトを取る選手になれば対戦の可能性も出てくる。楽しみにしています」 井上の次戦はIBFのランキング1位のマイケル・ ダスマリナス(フィリピン)との指名試合が濃厚となっている。サウスポー。過去にスパーパートナーとして日本に呼んでいた相手で、その実力は把握しているが、井上に油断は微塵もない。 「次はIBFの指名試合が濃厚となっている。サウスポーなんで、ここから切り替えて対策をしたい。今日、お客さんが入った会場でできたのは感覚を試せるいい機会になった」 今後の新型コロナの感染拡大の状況次第だが、陣営は可能であれば、国内でその防衛戦を開催したい方針を固めている。 今回のエキシビションマッチには特別な意味と意義があった。大会主催者は、PCR検査機器を全国の医療機関に寄付する予定でいるが、井上も、出演料の一部を寄付する考えだという。 「医療従事者の方々の最前線での活動のおかげで、このイベントができた。自分でもどんなことができるかをこれから考えていきたい」 世界のトップに立つプロとして、新型コロナに苦しむ社会に対して何ができるか、何をすべきかの使命感。これこそが井上がスパーで見せつけた凄さの理由なのかもしれない。 最後に。 エキシビションマッチ後のシャワー室で2人は一緒になった。 比嘉が「今度焼肉連れていってくださいよ」と“おねだり”すると、井上は「今は横浜に住んでいるそうなので近いしね。いきますよ」と快諾したそうである。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)