凝縮された「真剣度100%」9分間…井上尚弥は「LEGEND」で圧倒した比嘉大吾とのスパーで何を証明したかったのか?
2人はリング上で健闘を称えあった。 比嘉が「なんで打ち合ってくれたんですか?」と尋ねると、井上はこう返した。 「スパーでひたすら足を使うわけにもいかない。盛り上げないといけないからな」 井上は「比嘉はもっと足を使う作戦で来ると思ったのかもしれない。でも打ち合っても問題がないと思ったから打ち合った」とも説明した。 “井上レーダー“とも言える得意の察知力で比嘉の実力をすぐに分析。ヘッドギアを使った1ラウンドからスピードとパワーの違いを見せつけて圧倒した。左ジャブから右ストレート。そしてコンビネーションに左のボディブローを絡めて比嘉の動きを止めた。剛腕を封印し、俊敏なサイドステップでも翻弄。絶妙のクリンチワークもあった。 第2ラウンドには、前に出ようとした比嘉が、そこに右ストレートを被弾して一瞬、ひるんだ。ヘッドギアがなければ、おそらくキャンバスに沈んでいただろう。 井上が持ち得るすべてのモノを披露したショータイムだったが、”世界のモンスター”ゆえのプレッシャーがあったという。 「正直、このスパーリングは自分にメリットはないんですよ。比嘉選手は、どれだけやれるか、っていうところで、彼に限らず見ている人はそんな見方をする。その中で僕はレベルの違いを見せなきゃいけない。互角のスパーなら僕の評価は保てない。その意味でやり方的にはプレッシャーもあったしいい緊張感はあった」 比嘉とは、数年前にスパーリングをしたことがある。 「あの頃との距離は縮まんない。お互い成長しているし、その差が埋まっていたらダメだと思う。引き離さなきゃいけないので」とのプライドもあった。 最初は4階級制覇王者の井岡一翔に対戦オファーを出したが、実現せず、イベントの会見で同級生で親交のあるWBA世界ライトフライ級スーパー王者の京口紘人が対戦希望相手に井上を指名したが、京口も3月13日に米国での世界戦が決まり白紙になった。そこで指名されたのが、バンタム級に転向して2戦を戦い、大晦日にWBOアジアパシフィック・バンタム級王者になったばかりの比嘉だった。 「比嘉はバンタムに上げてきてフライで実績(WBC世界王者)も残した選手。ファンがどんなスパーを見たいかと考えたとき、比嘉とやれば、楽しみだと思う方が多いのかなと指名した」と井上が言う。