凝縮された「真剣度100%」9分間…井上尚弥は「LEGEND」で圧倒した比嘉大吾とのスパーで何を証明したかったのか?
試合前日に井上はツイッターに挑発文を投稿した。 「手を抜いた公開スパーリングなんて誰が見たい?お金を払って来てくれるのだからそれなりのものを見せないとね。みんな集まってくれよな!笑」 リングですべてを魅せるーーが信条の井上はSNS上や会見などでの舌戦を嫌う。だが、今回、あえて、それをやったのには理由があった。 「これがジムでやるのであれば、そこまでの責任感はない。会場に足を運んでくださるファンに満足して帰ってもらいたい。そういう方々に向けてスパーをした。僕のボクシングを見て、また頑張ろうという気持ちを与えたい。そういうものを発信するために、このイベントに出たのですから」 今回は、医療従事者、患者の方々を支援するチャリティーイベントだった。それゆえに、元気や、勇気を与えたいと、あえて“ガチ勝負”を宣言したのである。 では、そのガチ勝負度は何パーセントだったのか? 試合後の会見でストレートに、その質問を投げかけた。 「真剣度は100%。ガチにもいろんな種類がある。ほんとに倒しにいくガチなのか、距離を徹底するガチなのか。その色々な組み合わせでスパーをした。ガチというか、真剣度100%でした」 なるほど上手いことを言う。 井上のこの日の体重は62キロ。通常のバンタム級(53.52キロ)よりも約8キロも重たい。入場シーンでは自らの肉体を場内モニターで確認して「いつも絞った姿を見せているので恥ずかしかった」と言い「体重を絞っていないので試合でスピーディーな動きができるかと言えば、そうではない」とも言うが、十分にスピードはあったし、本格的に肉体を改造すれば、将来、60キロ弱、つまり2階級上のフェザー級(57.15キロ)でも戦える可能性さえ感じさせてくれた。そうなれば、5階級制覇である。 一方“琉球の壊し屋”は心に秘めた“野望”を木っ端微塵に吹き飛ばされた。このイベントを近未来に実現したい「世界前哨戦」と位置付けていたが次元の違いを思い知らされた。 「1ラウンドで疲れた。尚弥さんは強い選手とわかっていましたが、ちょっと凄い。スタイル的にはもっと距離をとってできるのに僕に合わせて打ち合ってくれた。(公式)試合になると打たせてくれることはない。接近戦もできるんだとわかったし、離れていてもパンチが見えている感があった。凄い」 井上が試合を盛り上げるために自分の領域で勝負してくれたこともわかっていた。 もう少しパンチが当たると思っていたのではないか? そう聞くと「もっと当たると思っていたし、半々」と苦笑いを浮かべた。