住まいと学校の断熱事情の最前線、夏は教室が危ない! 住宅は断熱等級6以上が必要、2025年4月からの等級4以上義務化も「不十分」 東京大学・前真之准教授
この状況に対して、強い危機感を抱いた前さんは、2023年の夏に、学校改修を求める2万6千人の署名を集めた上で、当時の文部科学大臣に小・中学校の断熱改修について提言をしたこともあるそう。ところが当時は「通常の建物改修で十分に対策できる」との返答で、納得のいくものではありませんでした。 「自治体によっても学校の断熱改修などの対応には差があります。例えば、ある都道府県では積極的に対策がとられているが、隣の県では全く断熱改修に取り組まれていなかったりします。自治体によって子どもたちの教育環境が大きく異なっている実態はあまり知られていません」 積極的に取り組みが行われている自治体の例として、東京・葛飾区では、区内の小・中学校で児童・生徒とワークショップ等を行いながら断熱改修し、その効果検証をしています。同じく東京・杉並区でも今後、断熱改修に取り組んでいく予定だそうです。 「文部科学省も、2024年3月に公開した『学校施設のZEB化の手引き』において、『まずは断熱改修から!』ということで、予防改修+屋根断熱を緊急で行うことを提言しています。日本中の教室が一刻も早く、すべて断熱改修されることを期待しています」
2025年4月から「断熱等級4」が義務化! 省エネ性能の表示制度も始まる
建築物省エネ法の改正(正式名称:脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律)を受け、2025年4月以降に着工するすべての新築住宅・非住宅で「断熱等級4」「一次消費エネルギー4」以上であることが義務化されます。これに先駆けて2024年4月に開始した建築物の省エネ性能表示制度は、新築住宅の販売時や賃貸住宅の入居募集時に住宅性能を明示することを販売・賃貸する事業者の努力義務としたもの。省エネ性能ラベルに記載される住宅性能の中で最も重要なのは、家マークの数で表されている「断熱性能」です。 前さんは「住宅の省エネ性能表示がようやく開始されたこと自体は一歩前進」と評価しながらも、「住宅も商品である以上、性能がきちんと表示され、それを買う側・借りる側が確認をして購入・賃借するのは当たり前のこと。今回ははじめの一歩であり、今後は中古住宅も含めて、住宅の性能が買う人・借りる人のすべてに提供されていくことが肝心です」と言います。