なぜ渋野日向子は3週連続トップ10入りも「優勝できる感覚はつかめていない」と語ったのか…抱える葛藤と進化の手ごたえ
「日本女子オープン」の4日間のフェアウエーキープ率は60.71%で、パーオン率は68.05%だった。優勝した勝はフェアウエーキープ率が80.35%で、パーオン率は72.22%。 その差がそのまま成績につながったが、「振れば真っすぐ飛ばせるようになってきた。気持ち良く振れる回数も増えてきた」と手ごたえはつかんでいる。 飛距離は大ブレークした2019年とほぼ同じくらいに戻ってきた。 今大会でも第1ラウンドでは508ヤードの5番、495ヤードの14番と2つのパー5で2オンに成功し、バーディーにつなげた。ただ「1打替わり」と自虐的な表現をするように、まだ調子の波が安定しない。 彼女が「優勝できる感覚がつかめていない」と発言した理由は、おそらくここだ。 実際、2019年11月の「大王製紙エリエールレディス」以来、優勝から2年も遠ざかっている。 実は、”しぶこ”は、ある葛藤を抱えている。「2兎を追っている」という複雑な現状だ。 今年の渋野の最大の目標は、来年の米ツアー出場権を懸けた11月29日からの最終予選会となるQシリーズである。米ツアー切符を争う8日間の長丁場で45位以内に入れば、2022年の米ツアーにツアーメンバーとして出場でき、さらに20位以内に入れば、より多くの試合に出ることができる。目の前の国内の試合とQシリーズ。試合に出る限りは、優勝を目指すのがプロの本能。もちろん、そこに全力集中しているからこそ、「優勝できる感覚をつかめていない」という優勝という2文字がコメントに出てくる。 だが、一方で、「自分の目標はやっぱり米ツアーだし、今はQシリーズなので」と最近も発言していたように、どうしても2つをてんびんにかければ気持ちの中で、Qシリーズが勝る状況。そこに葛藤がある。 渋野が師と仰ぐ石川遼も米ツアー復帰を目指し、来季の米下部ツアー出場権をかけて今月に米カリフォルニア州で行われる2次予選会(QT)に挑戦することを決めている。 その石川が最近の国内ツアーで「スイングのことばかりを考えていた」と発言したことがあった。優勝争いとは無縁の順位の試合だったが、石川に心酔する渋野が同じ葛藤を抱えていると考えても不思議ではない。それでも目に見えて進化している渋野は、その葛藤を乗り越えて国内ツアーでの復活Vを目指す。 「やるべきことをやるだけ。今回の悔しさ、というか悔しさばかりだけど、あんなこともあったな、と思える日がくるように結果を残していきたい」 渋野は8日から静岡・東名CCで行われる「スタンレーレディスゴルフトーナメント」に出場予定だ。