メジャー初制覇に獲得賞金2億円突破…なぜ女子ゴルファー稲見萌寧は強くなったのか…東京五輪銀メダル効果とパットの進化
女子ゴルフの国内メジャー「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」の最終日が12日、茨城・静ヒルズCC(6680ヤード、パー72)で開かれ、東京五輪銀メダリストの稲見萌寧(22、都築電気)が通算19アンダーでメジャー初制覇を果たした。 シーズン8勝目は2003年の不動裕理の10勝に次ぐ勝利数で、シーズン獲得賞金は15年のイ・ボミ以来2人目となる2億円を突破した。ただ、今季はコロナ禍で試合数が大幅に減少した2020年と21年が統合された異例のシーズン。試合数は20年が14試合、21年が38試合の計52試合と19年シーズンよりも13試合多く、記録の多くは注釈付きとはなるが、「稲見時代」の到来を高らかに告げる優勝となった。
「難しいコース。勝てるとは思っていなかった」
予選ラウンド(R)の2日間と決勝Rの2日間、稲見は別人だった。第1R、第2Rともに2アンダーの70で回り、首位と4打差の10位タイで決勝Rに進んだ。そこからギアチェンジし、決勝Rの2日間で16バーディー、1ボギーとスコアを一気に伸ばしての栄冠。今季の平均ストロークは予選R、決勝Rともに1位だが、その数字は予選Rの70.0320が決勝Rでは69.9192と跳ね上がる。 勝負どころを見極め、日ごとに調子を上げて最後にトップに立つのが稲見の必勝パターンだが、今回も勝利の方程式がきっちりとはまった形だ。 「難しいこのコースで、今勝てるとは思っていなかった。本当に毎週、予選を通りたいと思ってやっているので、予選を通って気分が楽になって、しり上がりにスコアが良くなっていく。それをメジャーでできたことがうれしい。最初から伸ばして行こうとは思っているんですけどね」 元々ショットの切れ味には定評があった。 2018年のパーオン率はツアー歴代最高の78.21%。稲見自身も「パーオン率にはこだわりたい」とショットメーカーを自負していた。これに今季はグリーン上でのパフォーマンスの向上が加わった。 18ホールのツアー最少ストロークに並ぶ61をマークして優勝した5月の「中京テレビ・ブリヂストンレディス」でキャデイーを務めた奥嶋誠昭コーチは、愛弟子の躍進の要因を尋ねられると「パッティングです」と即答。「昨年9月に今のパターに替えて、打てば入るという感じになった。それもあって今年はパッティングの練習量を増やしました。変わったのはそのくらいです」と説明した。 稲見にとってパッティングは長年の課題だった。一度使い始めたクラブは、なかなか変えないタイプの選手だが、パターだけは別。あれこれと試し“打ち出の小づち”のようなパターを探していたときに、出合ったのが昨年の「日本女子プロ選手権」で優勝した永峰咲希が使ったテーラーメイドの「トラスTB1」だった。 「私も使ってみようと思った」 そこから快進撃が始まった。