「3日間で小説を作り上げるからこその熱量がある」 ー3拠点同時開催する“NovelJam2024”の新たな挑戦
3拠点での開催:新たな挑戦
―― 2024年のNovelJam は3拠点で同時開催されると聞きました。この新しい試みについて教えてください。 波野:はい、2024年は東京、新潟、沖縄の3拠点で同時開催します。複数拠点で同時にリアル進行っていうのは初めての試みなんですけども、一部参加者のリモートワークやオンライン開催などいろんなエッセンスは経験済みですので、おそらくうまくいくだろうと思っています。 この試みのきっかけは、2021年のNovelJam後に始まって昨年まで行われていた「阿賀北ノベルジャム」という新潟でのイベントでした。そこでの経験を活かして、今回は東京と新潟、そして沖縄を加えた3拠点での開催に挑戦することになったんです。 ―― 地方での開催にはどのような意義があるのでしょうか? 波野:地方の活性化という点で、大きく2つの意義があると考えています。 1つ目は、メイン会場の誘致ができるということです。例えば、将来的には国体のように、メイン会場を毎回地方で持ち回りにするようなことも可能かもしれません。各県代表でチームを作り、47か所同時開催でゴールを目指すというような大規模なイベントに発展する可能性もあるんです。 2つ目は、お題をご当地ネタで出せるという点です。例えば、地域の特産物とか今売り出したい特色なんかをテーマにすることで、それに関わる物語がいっぱい作られるということですね。これは地方の宣伝にもなります。実際に、物語から派生してその土地が「聖地化」して観光資源になるということもあり得るんです。 新潟では独自のテーマを設定する予定ですし、沖縄からも地元の特色を活かした作品が出てくることを期待しています。
AIと創作の共存
―― AI技術の進展が著しい中、NovelJamではAIの使用についてどのようにお考えですか? 波野:AI技術自体はまったく否定していません。むしろ、ある意味では歓迎しているとも言えます。私はAIをモータリゼーションと同じような意味合いで捉えています。つまり、歩くことしかできなかった人類が自動車の発明で速く移動できるようになったというようなことに近いものだと考えているんです。ただし、AIを活用する際には現行法に見合った使い方をしていただく必要があります。特に著作権に関しては慎重に扱わなければなりません。 AIの活用については、前述の「阿賀北ノベルジャム」ではAIをテーマにして、AIを活用して小説を書くという試みも行われました。多くの参加者は、プロットの構築や調査の時間を圧縮するためにAIを活用していて、文章そのものをAIに書かせてそのまま使うというチームはほとんどなかったようです。 ―― AIの使用に関して、何か制限は設けていますか? 波野:今回のNovelJam2024では、AIの使用に関して特別な制限は設けていません。むしろ、AIと著作との良い関係を模索するテストベッドとしての役割も期待しています。 ただし、AIを使うにしても、やはり創作の本質は人間にあると考えています。NovelJamに参加する人々は、本を書きたいという強い思いを持っています。NovelJamは、AIはあくまでもツールの一つであり、創作の主体は人間であるという場になるのではないかと考えています。