ノーベル賞「化学賞」2015年の受賞は? 日本科学未来館が予想
2015年のノーベル賞の発表が近づいてきました。10月5日の生理学・医学賞を皮切りに物理学賞(6日)、化学賞(7日)の順に自然科学3賞が発表され、平和賞(9日)、経済学賞(12日)と続きます。昨年は赤崎勇、天野浩、中村修二の3氏が物理学賞を受賞し、日本中が沸きました。 【写真】昨年は日本の研究が受賞 今年の「ノーベル物理学賞」は? 今年はどんな研究をした、どんな科学者に贈られるのでしょうか。日本人受賞者は今年も誕生するのでしょうか。日本科学未来館は自然科学系3賞の受賞者を予想しています。同館の科学コミュニケーターが注目する研究を、ここ数年の受賞分野の傾向と合わせて紹介します。
《化学賞》
化学賞の予想は非常に難しいです。「化学」の範囲が非常に広く、生化学、物理化学といった複合分野が多いことに加え、物理学賞にあるような受賞分野の強い規則性が見られないのです。そんな化学賞だからこその大胆予想をお届けします。
きっとあなたのスマホにも入っている
■「リチウムイオン二次電池」の開発=ジョン・グッドイナフ(John B. Goodenough )博士/水島公一(みずしま・こういち)博士/吉野彰(よしの・あきら)博士
このお三方は、現代のモバイル社会に欠かせない「リチウムイオン二次電池」(以下、リチウム充電池)を開発しました。皆さんのスマホやデジカメにもリチウム充電池が使われているはずです。 リチウム充電池が生まれる前から、ニッカド電池など様々な充電池が存在していましたが、リチウム充電池がすぐにこれほど普及したのには理由があります。 1つは「軽い」。リチウムは最も軽い金属です。リチウム充電池もそれまでの充電池に比べると軽く、モバイル機器にはぴったりでした。
2つ目は「メモリー効果が少ない」。メモリー効果とは、充電する前にどのくらい電池が残っていたかを覚えてしまうやっかいな性質のこと。メモリー効果が大きい充電池は、充電するとき、充電する前に残っていたところまでしか充電しないため、しっかり使い切らないと電池として使えなくなっていってしまいます。リチウム充電池はその効果が少ないので、長期間使うことができます。 3つ目は、何より高電圧。従来の充電池が約1.2ボルトであるのに対し、リチウム充電池は約3.7ボルト。おかげで様々な機器で使うことができます。 電池には電流の取り出し口である「正極」と「負極」があり、正極から負極に向かって電流は流れます。この正極と負極の材料が、電池の性能と使い勝手を決めます。 グッドイナフ氏とその研究室に留学していた水島氏は、充電池の正極としてリチウムコバルト酸化物が適していることを発見しました。吉野氏は、リチウム充電池の負極として炭素材料が適していることを見つけ、グッドイナフ・水島両氏が発見したリチウムコバルト酸化物を組み合わせて、リチウム充電池の原型を開発しました。 ◎予想=科学コミュニケーター・田中健