アーティゾン美術館、2025年の展覧会スケジュールが公開
展覧会ラインナップと見どころは?
印象派と日本近代洋画を中心に、古代から現代アートまで約3000点のコレクションを所蔵している石橋財団によって運営されているアーティゾン美術館。このたび、2025年に開催する展覧会スケジュールが公開された。展覧会のラインナップを見どころとあわせて紹介する。
ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプの創作と協働制作の試み
2025年3月1日~6月1日は、「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」展が開催される。テキスタイルデザイナーとしてキャリアを開始し、緻密な幾何学的形態による構成を、絵画や室内空間など領域を横断しながら追求したスイスのアーティスト、ゾフィー・トイバー=アルプ(1889~1943)と、その夫で、詩人としての顔も持ちつつ、コラージュやレリーフ、彫刻を制作したジャン・アルプ(1886~1966)。20世紀前半を代表するアーティストカップルをめぐる本展では、それぞれの創作活動を紹介するとともに、互いの制作に与えた影響や協働制作の試みに光を当てる。カップルというパートーシップのうえにいかなる創作の可能性を見出せるかを再考する内容になるという。
マティスに師事した硲伊之助の展覧会
「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」展と同時開催(2025年3月1日~6月1日)されるのが、「硲伊之助展」だ。フュウザン会や二科会で若い頃から注目され、一時は文化学院や東京藝術大学で後進の絵画指導にあたり、晩年には色絵磁器の創作に取り組んだ硲伊之助(1895~1977)。制作活動のかたわら、西洋美術の紹介にも尽力し、自身が師事したアンリ・マティスの日本初の回顧展の実現に向けた交渉に携わるなど、多岐にわたる活動を行った。本展では、硲の油彩画、版画、磁器など約60点の作品や資料に加え、硲が収集し、アーティゾン美術館に収蔵されている西洋絵画コレクションを展示することで、硲の多様な側面を紹介する。
石橋財団として初めて、女性アボリジナル作家に焦点を当てる
2025年6月24日~9月21日に開催される「オーストラリア現代美術 彼女たちのアボリジナル・アート」展は、2006年にオーストラリア現代美術の展覧会を開催して以降、継続的に作品を収集してきた石橋財団が、初めて女性アボリジナル作家に焦点を当てる展覧会だ。地域独自の文脈で生まれた作品の再考が進む近年の国際的な現代美術の動向とも呼応し、あらためて注目を集めているオーストラリア先住民によるアボリジナル・アート。展覧会では、所蔵作家4名を含む7名と1組の作家の作品を通して、現代の多様な表現を紹介するとともに、オーストラリア先住民美術への深い理解と認知を目指す。
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