83歳・みつはしちかこ「心不全で倒れた後、生前の夫が希望していた<樹木葬>を考えるように。お墓って暗くて怖いイメージがあるけど…」
60年以上愛される『小さな恋のものがたり』や、明るくにぎやかなファミリー漫画『ハーイあっこです』など、今も多くのファンを魅了する漫画家・みつはしちかこさん。83歳になり、家族のことを思い出しながら、ひとり暮らしを楽しんでいます。今回は、みつはしさんの新著『こんにちは! ひとり暮らし』から、心あたたまるエッセイの一部をお届けします。 【イラスト】みつはしさんの思い出が詰まった捨てられない道具の数々 * * * * * * * ◆捨てられない、生前整理は難しい わたしは今、2LDKのマンションに住んでいますが、二つある部屋の一つはすっかり物置場になっています。 そろそろ思い切って生前整理をしておかなくちゃ、子供たちに迷惑をかける、と片づけはじめるのですが、みんな思い出がしみ込んでいて捨てられないのです。 結局、途中でギブアップして、捨てる決心をしたものをまた元に戻してしまいます。 しかし、元に戻そうとしたものが元に収まらないというのは、どういうことなのでしょう。 そんなに詰め込んでいたのかしら……。そうなのでしょうね。 引っ越してきたときは、結構広々としていたのに、気がついたら物だらけになっている現実。
◆いい思い出たちを捨てられず わたしの友人の家は、きれいスッキリしている(といっても、かなり広い3LDKですが)。どの部屋もスッキリしています。 「なんでこんなにきれいに住めるの?」と聞いたら、「いらないものはどんどん捨てる!」。右から左へ毎日さっさと捨てて、キレイを保っていると。 わたしといえば、いい思い出たちを捨てられない。 今も愛用しているバスタオル。義母が好きだった味噌こしは、アルミ製で、今はもう全く使っていないのに、なぜか捨てられない。 好きな本(一番古いのは、中学時代に読んで感動した『ジャン・クリストフ』)、うれしい手紙類、お気に入りの絵ハガキ、何十枚もの大判ケント紙(劣化してフチが黄ばんでいる)、頂きものが入っていた容器、古いアルバム、ビーズの指輪……その他イロイロ。 チマチマしたものたちがいっぱい貯まっています。が、肝心の(?)お金はさっぱり貯まっていません。 捨てようと取り出したものたちを戻しながら、「マ、イイヤ」「子供に迷惑をかけても、わたしが死んでしまったらみんなきれいに捨ててくれるだろう」なんて。
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