JALの新パートナー! インド最強LCC「インディゴ」が、自国でシェア60%を誇る3つの理由
国内市場集中でシェア拡大に成功
インディゴが国際線への進出を避け、国内市場に集中し続けたことも大きな要因だといえる。前述のように、インドでは国際線を運航するには、就航から5年以上の経験と20機以上の機材が必要という規制がある。 2000年代から2010年代のインドでは、航空会社が収益の高い国際線に早急に進出したいと考えていた。そこで、規制を回避するために、就航歴が5年以上の航空会社を買収するケースが多かった。その代表例が、かつてインディゴと競り合ったキングフィッシャー航空やジェットエアウェイズだ。 しかし、両者は高級志向ではあったが、LCCの買収によってブランドイメージやコスト面での影響を受け、経営破綻に追い込まれた。さらに、2014年に設立されたエアアジア・インディアは、インド政府に規制撤廃のロビー活動を行ったが、賄賂疑惑が浮上し、最終的には撤退を余儀なくされた。 一方、インディゴは規制改革や回避策に手を出さず、国内市場にリソースを集中させ、5年間で国内ネットワークを着実に拡大した。その結果、競合他社が企業買収や政治的調整に時間を費やすなか、インディゴは多くの地方都市に就航し、確実にシェアを拡大することに成功した。 インディゴは、厳しい規制に対して不満を述べるのではなく、限られた条件のなかで成長するための具体的な戦略を考え、実行した。その実行力は、誰でも口にするが実際にはなかなか行動に移せないことを見事に実現したといえるだろう。
航空業界の記録更新
インディゴの快進撃は今も続いている。 2023年6月、同社はエアバスから500機のエアバスA320シリーズを購入することを発表した。この発注数は、航空業界史上最多の一度の注文となる。また、国内線や中東・東南アジア路線を中心とした近距離国際線の運航が予想され、インド市場でのさらなる強さを感じさせる。 さらに、インディゴは大型機エアバスA350を70機導入することも発表した。これにより、座席供給数が増加し、長距離国際線への進出が期待される。この70機の発注数は、日本航空を上回る規模であり、インディゴの勢いと拡大戦略を示している。 インド発の長距離国際線は、インド系移民が多い英国や米国が中心になると思われるが、筆者(前林広樹、航空ライター)はエアバスA350の就航地として日本にも期待している。実際、日本とインドを結ぶ路線は ・JAL ・ANA ・エアインディア の3社だけで、距離の割に航空運賃が高くなることが多い。例えば、東京からニューデリー(約5800km)と同じくらいの距離にあたるシンガポール(約5300km)やホノルル(約6300km)の往復航空運賃と比較すると、ニューデリーの方が2~3万円以上高くなることが珍しくない。 「いつかは行きたい」と思う人が多い国であるだけに、インディゴの日本への就航にぜひ期待したい。