“目立つ都知事” “置き去りの都民” 10年で知事4人、「回転ドア都政」は何をもたらしたか?
2020年が始まった。東京都にとっては五輪・パラリンピックが開催される年であるとともに、「五輪後」の都政のかじ取りを担う都知事選が行われる年でもある。選挙での注目点はどこなのか。元都庁職員で、行政学者の佐々木信夫・中央大名誉教授に過去10年の都政を振り返りながら、解説してもらった。 ************* どうも首都の政治がおかしい。都知事が「回転ドア」のように変わる。この10年で知事が4人。それまで都知事は3期12年務めることが多く、任期も安定し、4年に一度巡ってくる都知事選は統一地方選の花形だった。 だが、2012年10月に石原慎太郎氏が4期目途中で国政復帰のため辞任すると、後継の猪瀬直樹氏が1年、舛添要一氏が2年4か月で辞任、そして小池百合子氏へ……。この10年の都政は、都民ファーストどころか、選挙・都知事ファーストの様相が強く、一言でいうなら“政局あって都政なし”。“目立つ都知事”“置き去りにされた都民”と言ってもよい。小池氏は7月30日に一期目の任期満了を迎えそうだが、一寸先は闇、何が起こるか分からない。都政はどうなっていくのだろうか。
都政停滞も「東京2020」が隠れ蓑(みの)に
あたかも都知事の「リレー競技」でも見ているかのようだった2010年代が終わり、7月5日には都知事選がある。小池氏はメディア向けの派手なパフォーマンスが先行した。豊洲市場の移転延期を打ち出したかと思えば、今度は「築地の再活用だ!」「国際会議場だ!」と思い付きのような施策を打ち出す。そんなドタバタ都政に翻弄されたのは誰か。言わずもがな都民である。 そうした混乱の間に、東京はニューヨーク、ロンドン、パリと並び称された世界都市の輝きを失い、極東アジアの一地方都市になってしまった感がある。内にあってはヒトが老い、インフラが老い、大地震や集中豪雨の災害危険度が高まっている。東京五輪・パラリンピックの準備が話題の中心となり、都政の内部過程、知事のハンドリングの拙(つたな)さや都政の停滞は陰に隠れてしまっているが、ポスト五輪の都政はそうはいかない。