「盛り」と「加工」専門家・久保友香が語る、AIが描く未来のビジュアルコミュニケーション
「盛り」というワードが定番化して久しいが、平成の頃と比べると「盛り」もだいぶ進化してきた。2006年頃のプリントシール機で人気だった「盛り」は、スマホの普及とともに加工アプリへと波及し、最近ではAIが世間を賑わせている。 スマホで自撮りをするには欠かせないくらいの存在となっている加工アプリだが、その技術の現在地はどこにあるのだろうか? そして、目が離せないAIは今後どのような未来へと向かっていくのだろうか? 今回は、シンデレラテクノロジーや、盛り文化を研究している久保友香さんにお話を伺った。
日本人の美意識がまさに「プリクラ」だった
基本的に私たちは技術者が生み出したテクノロジーを受け取る側だ。 技術者とともに同じ時代を歩んでいるのにも関わらず、彼らから受け取ったテクノロジーは数知れない。 何気なく生活に溶け込んでいる、プリクラも加工アプリもそのひとつだ。 平成から現在までを振り返るとかなりの進化をとげているが、久保さんが「盛り」や「加工」の研究を始めたのには、どのような背景があるのだろうか。 「元々、技術系の研究者として画像処理をテーマにしていました。次第に顔の画像処理の技術を研究するようになったのですが、顔となると、水の表現などとは違って、自然現象に近づけることを目指すだけではなく、文化についても立ち向かうことになりました。それがのちに『盛り』の研究を始めることに至ります」 CGや画像処理は、主にアメリカのハリウッド映画のための技術が進んでいた。そこで彼女は、アメリカとは異なる日本の文化にある美意識を、そういったものに取り入れることはできないかと考えた。
最初に、過去から現在までの日本の美人画の特徴の数値化に着手した。浮世絵や絵巻からも分かる通り、日本の美人画はデフォルメされて、フォトリアリスティックではない。そこに日本人の美意識が表されていると考えた。それをCGや画像処理の技術に組み込む手法を開発し始めたのだ。