「盛り」と「加工」専門家・久保友香が語る、AIが描く未来のビジュアルコミュニケーション
「写真を加工して盛れたい」という思いは、プリクラだけにはとどまらず、2012年頃になるとスマホの加工アプリにも求められるようになる。そして、加工アプリが普及した頃には、InstagramやXといったSNSが私たちのビジュアルコミュニケーションのベースとなった。 2012年頃と比べると、現在私たちが求める「盛り」や「加工」にも変化してきたところはあるのだろうか? 「スマホに関して言えば、その頃から振り返ると、カメラの性能、通信速度、画像処理技術、いずれもものすごく進化しました。 2012年辺りだと、ちょうどガラケーとスマホの2台持ちをしていたときですね。 当時スマホのカメラは、ガラケーのカメラよりも性能は低かったのですが、スマホはガラケーと違ってマルチタッチで加工の操作がしやすかったので、スマホで自撮りの文化がスタートしました。まだ技術が低かったからこそ、『盛り』の中にも『遊び心』が強かったとは思いますね」 平成の頃と比べると、現在のプリクラの画像処理は「過剰さ」が当たり前のようになってきた。黄金比ではない、不自然なほどの目の大きさが私たちのイメージする現代の「プリクラ」だ。 それに対して、加工アプリの「盛り」は、加工であっても自然な美しさを求められていような気がする。そのあまりにも自然な美しさは、ユーザーに軽い焦燥感や嫉妬に近い感情を生み出してしまうこともある。 「確かに、少し前はもっと、『盛る』に対して、明るくあっけらかんとした雰囲気があったかもしれません。
あくまでも『盛り』は『遊び』であったと思います。しかし、技術が進歩しすぎてしまったことにより、『盛り』に対して『真剣』になってしまったということが、そう感じさせるようになったのでしょう。技術者が、リアリティや美しさを追求しすぎて、ユーザの『遊び心』を掻き立てる余地をなくしてしまったのかもしれません。 『遊び心』があるのが『盛り』で、『真剣』にキレイになりたいというのは別の話ではないかと考えています」