「盛り」と「加工」専門家・久保友香が語る、AIが描く未来のビジュアルコミュニケーション
歴史を中心に研究していた過程の中で、過去ではなく未来に目を向けたときに、美人画に表れる日本人の美意識を組み込んだ技術に似ていると感じたのがプリクラだったという。
「まず日本の美人画と『Popteen』の表紙が似ていると気づいて、買い始めていたのです。共に、そこに登場する女の子たちの顔がそっくりに見えて、それはデフォルメしているからだと考えたのです。その頃、たまたま図書館で隣の女の子たちが、プリクラの話をしていて、私が若い頃に撮っていたプリクラは今もあるんだと知って、すぐ撮りに行ってみました。 プリクラも『Popteen』や『小悪魔ageha』の表紙のように、写真の加工をしてデフォルメしている。しかもプリクラはそれを自動化した画像処理の技術なので、プリクラメーカーさんは絶対に数値化しているので、私がやりたいことと似ているのではないかと思いました。
その頃、女の子たちの声に耳を傾けると、『Popteen』の表紙やプリクラ写真に見られるデフォルメのことを「盛り」と呼んでいることに気づきました。それで、美人画のデフォルメの研究から、現代の女の子の『盛り』の研究へと移っていった感じですね」 日本発のプリクラの顔画像処理は圧倒的に進んでおり、久保さんが考える、日本的な美意識が詰め込まれていた。 そして、「盛り」の画像処理の技術は、2010年頃以降はスマホが普及することによって、今度は「自撮り」という文化と組み合わさった。
技術者と私たちの間にある、「遊び心」
久保さん曰く、「盛り」の歴史には何段階かの革新があるという。 それと同時に私たちの「写真を撮る」という感覚もだいぶ変わってきた。 90年代に登場したプリントシール機は撮影してできた写真のほぼそのままだったが、2000年代に入ると「花鳥風月」のような目だけを認識して自動的に強調してくれる機会が登場した。そして2010年代になると顔全体の光と影を操れるようになったのだ。