国内外で年間250店、トリドールHD粟田社長はなぜ新規出店の意思決定を人に任せるのか?
■ 人を頼り、人に任せる「弱者の経営」 成長を急ぎ、未来を先取りしようとするならば、一人ではなくドリームチームをつくるべき。今はそう考えています。採用についての考え方が変わったのは、上場準備の時でした。この時初めて、自分が経験したことがない仕事をする人を採用したからです。 トリドールは今や、売上収益が2320億円、国内外合わせて1950以上の店舗を持つ会社になりました。この実績が資本力と経営力への信頼となり、優秀な人材が集まってくれるようになりました。 例えば、海外事業を管掌している副社長兼COOの杉山孝史。彼はデロイト トーマツ コンサルティングに勤めた後、トリドールの「海外に4000店を出す」という無謀とも言える夢に共感して、2019年に入社してくれました。丸亀製麺の海外事業の責任者や海外事業本部でローカルバディの探索やM&Aを担当する経験豊富なメンバーを集めてくれたのです。 初めて行ったハワイで空き物件と運命的な出会いをし、勢いで出店したことから始まった海外進出。 私自身は、難破して偶然アメリカに着いたジョン万次郎のようなものです。外国語大学に通っていたけれど、いまだに英語は苦手です。そんな私でも、仲間を集めれば、グローバルフードカンパニーになるという壮大な夢が叶えられるかもしれない。私自身の力は昔から変わっておらず、さまざまな能力をもつ人材が集まることでトリドールの総合力が増していったのです。 私は、自分が非力であることを実感しています。一人では何もできないからこそ、仲間の知恵を集め、勝ち筋を見出していく。いわば「弱者の経営」というスタイルです。描いている夢に対して自分の力が足りないのは百も承知だからこそ、「力を貸してほしい」と言える。 人を頼り、人に任せられる。この弱者の経営スタイルは、実は一番強いのではないかと考えています。
粟田 貴也