『べらぼう』蔦屋重三郎、初の自主制作本『一目千本』が大ヒット!客の興味を掻き立て、吉原の遊女からも評価を高めた<画期的すぎる方法>とは
1月5日から、2025年NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の放送がスタートしました。横浜流星さん演じる本作の主人公は、編集者や出版人として江戸の出版業界を支えた“蔦重”こと蔦屋重三郎です。重三郎とは、いったいどんな人物なのでしょうか?今回は、書籍『べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』をもとに、重三郎マニアの作家・ツタヤピロコさんに解説をしていただきました。 【書影】江戸出版界の礎を築き上げた“蔦重”のすべてがわかる!ツタヤピロコ『べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』 * * * * * * * ◆蔦屋重三郎が初めて自分でつくった本 『吉原細見』については、重三郎はあくまで編集者の一人でした。中身を考えてはいましたが、版元は鱗形屋孫兵衛です。重三郎は下請けと販売をしていたにすぎません。 蔦屋重三郎が初めて自分でつくって販売した本は『一目千本(ひとめせんぼん)』という本でした。1774年、安永3年のことになります。これも吉原遊女のガイドブックなのですが、細見とはちょっと雰囲気が違います。 『一目千本』のページにかかれているものは、きれいなお花です。木蓮(もくれん)、山葵(わさび)、百合、菊、牡丹、水仙、桔梗(ききょう)と、様々なお花の絵が紙に大きく描かれています。 そして、その横に**屋、**と何やら一言書き添えてあるのです。
◆添えられた言葉の意味は…… 実は、これは遊女を美しい花にたとえて紹介している絵本なのです。 **屋の**は牡丹のように華やかで美しいですよ。**屋の**は木蓮のように匂い立つような色っぽいお姉さんですよ。**なんて真っ白な百合の花のように気高い雰囲気でイケてます。 といったように、人気遊女の特徴を花で表してみたのです。考えたものですよね。いまのように写真で紹介することができないから、お姉さんたちの雰囲気を精一杯伝わるようにかいたのです。 人はミステリアスなものに惹かれるものです。『一目千本』を手にとった人たちは、その抽象的な説明に、妄想が大きく膨らみました。結果、吉原への興味がいっそう掻き立てられることとなったのです。こうして『一目千本』は集客へとつながっていきました。 異色の遊女紹介本である『一目千本』は、遊郭や遊女のあいだでも評価が高いものでした。自分たちをきれいなお花にたとえて紹介してくれるなんて、素敵。粋だわ。といった具合です。
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