切断障害者のサッカー「アンプティ」 コロナ乗り越え全国大会 北澤豪氏「レベル上がった」
「競技から気持ち離れてしまうんじゃないか」不安
決勝で大敗した「関西セッチエストレーラス」にもコロナは影を落としていた。3月にバングラデシュであった、アンプティサッカーのW杯東アジア予選を日本代表GKとして戦った上野浩太郎選手。滋賀県在住で、大阪府で感染者数が増えた時期には、チーム練習参加をためらった。「自分自身も感染したくはなかったが、それ以上に『滋賀から大阪、大阪から滋賀にコロナを持っていけない』という思いが強かった。1人でGKの練習は難しい。コロナがなければ、GKとしてもっとレベルアップできていたはずだった」。 今大会で関西の監督を務めた植田拓生さんによると、チームに医療関係者が多い点も、集まりづらい状況が続く要因になっていたという。「選手やスタッフの気持ちがアンプティから離れてしまうんじゃないかという不安があった。オンラインミーティングで何とかその気持ちを継ぎとめようとしたこともある。この2年半で失ったものもあるかもしれない。ただ、活動を継続できたから、チームとして集まることができた」と植田さん。大会を迎えられたことに、ホッとした表情を見せた。 国内3強のうち、コロナの影響が大きかった九州、苦しめられた関西と、優勝したFCアウボラーダとの力の差は明確だった。大会を主催する日本アンプティサッカー協会の最高顧問・セルジオ越後氏も「アンプティサッカーを国内に広げようと、選手やスタッフに協会、みんなが努力してきたが、コロナという大変な相手がわれわれの活動を阻んだ。大会の中ではっきり、体力や技術の差が出たと感じている」と認めざるを得なかった。 一方で、この結果をポジティブにとらえる声も上がった。アンプティを含む7つの障害者サッカーの競技団体を統括する「日本障がい者サッカー連盟」の北澤豪会長は「(コロナ禍の中でも)やれる範囲で、貴重な時間をどう使ってきたのかがうかがえるようなチームがあった。大会のレベルが上がった」と言い切った。