切断障害者のサッカー「アンプティ」 コロナ乗り越え全国大会 北澤豪氏「レベル上がった」
北澤豪氏は「成功例」の広がりに期待
「(アウボラーダは)ネクストジェネレーション、新しいタレントが出現した。あいつらは、みんな最初は小さかったでしょ(笑)。そこからチームとして持続的な強化、違う世代との融合を図って、成長を見せた。一つのモデルチームの成功例として、他のチームも『同じようにしよう』とつながってくる。少しずつ影響されていくのがいいと思っている。きっと次の始まりになる」と北澤会長は期待する。九州の上中進太郎選手も「アウボラーダはコロナ前から定期的な練習を継続して若手を育てた。自分たちはなかなか、その場を与えることができていない」と省みつつ、ライバルの実績を認めた。
コロナ感染のピーク時は、アウボラーダもやはり練習ができなかったという。ただ、コロナ前から継続的な練習で育んでいた「新しい芽」が開花。小学生や中学生のころから大人に交じっていた3人が着実に主力に成長した。15歳の石井賢選手、14歳の久保満寛選手はDFを追い回してボールをカットしたり、スペースに飛び出してゴールを奪ったり、相手守備に脅威となり続けた。19歳の秋葉海人選手は、国内屈指の強烈なシュート力や突破力を見せつけた。大人たちにも日本代表クラスがそろい、個人技もトップクラスのアウボラーダだが、今大会は相手にボールを容易に運ばせず、チームとしての守備面のポジショニングや判断の良さも際立っていた。 「(九州や関西との対戦は)だいぶ間隔があいていて、どんな試合になるか心配だったけど、やっぱりアウボラーダが一番練習しているので。チーム練習は週1回ペースですけど、全員が自主練を積んでいるはず」。この結果は当然だ、と言わんばかりの石井選手のコメントは力強かった。 コロナ禍でも新しい戦力を育てたアウボラーダの強さが目立ったが、敗れた選手たちに落ち込む様子はなかった。試合に飢えた選手たちのために、今大会ではチームの枠を超え、45歳以上の選手らを集めたエキシビションマッチも実施された。「本当はトーナメントに体力を集中するべきなんですけど、張り切っちゃいました。とにかく、1試合でも多くやれてよかった」と九州の野間口選手。大会後の選手たちの表情から、充実感をうかがい知ることができた。「試合」は、コロナで落ち込んだ気持ちを前向きに変える特効薬だった。