ネアンデルタール人と現生人類はなぜ同じ地域で同時期に埋葬を始めたのか、驚きの新説
埋葬の習慣は中東のレバントで始まりアフリカや欧州に広がった、慎重論も
石器時代、ほぼ移動生活をしていた人類は、自分たちの縄張りを示す手段をほとんど持っていなかった。しかし、中東のレバントと呼ばれる地域で発見された古代の埋葬跡を分析した結果、現生人類であるホモ・サピエンスとネアンデルタール人がそれぞれ死者を埋葬し、その場所を、自分たちの土地であることを示す目印にしていたのではないかとする論文が9月6日付で学術誌「L'Anthropologie」に発表された。 ギャラリー:謎の人類ホモ・ナレディが死者を埋葬した証拠、壁には彫刻も 画像11点 「死者の埋葬というイノベーションは、実はレバントで始まりました」と、イスラエル、ハイファ大学の考古学者オムリー・バルジライ氏は言う。 レバントとは、現在のシリアの大部分、レバノン、イスラエル、パレスチナを含む地域を指す。バルジライ氏は、同じくイスラエルにあるテルアビブ大学の理学療法士で古人類学者のエラ・ビーン氏とともに、レバント全域にあるネアンデルタール人とホモ・サピエンスの埋葬跡を比較し、死者の扱いについて2つの種の間で共通の習慣があったことを示唆した。 「ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの間には、いくつかの類似点と、大きな相違点がありました」と、ビーン氏は言う。
何をもって埋葬と呼ぶか
古代の埋葬を調査する際、研究者たちは常に、初期のホモ・サピエンスとその近縁種を含むヒト属が意図して遺体を埋葬したのか、それとも何らかの自然現象によって遺体が地に埋もれたのかを検討する。 1950年代と60年代に、イラクのシャニダール洞窟でネアンデルタール人の人骨が発見され、その周囲から古代の花粉の塊が見つかった。これについて一部の専門家は、ネアンデルタール人が意図的に花と一緒に死者を葬っていた証拠だと考えている。 バルジライ氏とビーン氏は、過去にも共同で、イスラエル北部にあるアイン・カシシュという場所で約7万年前のネアンデルタール人の埋葬跡を発掘した。洞窟ではなく平原でこのような跡が発見されたのは初めてだった。 それ以来、研究者たちは、これが意図的な埋葬なのか、もしそうであればほかのネアンデルタール人やホモ・サピエンスの埋葬とどう違うのかという疑問を抱いてきた。 ネアンデルタール人とホモ・サピエンスは、レバントでおよそ12万年前から5万年前まで共存していた。そしてこの頃から、どちらの種も自分たちの死者を埋葬し始めた。過去の記録を詳しく調べた結果、研究チームは、レバントでこの時期のネアンデルタール人による埋葬跡を5カ所、ホモ・サピエンスによる埋葬跡を2カ所発見した。