ネアンデルタール人と現生人類はなぜ同じ地域で同時期に埋葬を始めたのか、驚きの新説
ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の埋葬の違い
ネアンデルタール人はほとんどの埋葬を洞窟内で行っていたが、同時期のホモ・サピエンスは、岩陰(岩窟住居)や洞窟前の平坦な場所に死者を葬っていた。どちらの種も、女性、男性、子どもを埋葬したが、赤ちゃんが埋葬された痕跡は、ネアンデルタール人の埋葬跡でしか見つかっていない。 ホモ・サピエンスの遺体は、仰向け、または膝を胸に引き寄せた胎児の姿勢で横向きで埋葬されていた。ネアンデルタール人も、一部の遺体は同じように埋葬されたが、ほかにも様々な姿勢の遺骨が発見されている。 どちらの種も、有蹄類の角や動物の顎骨などの品を一緒に墓に入れていた。そしてネアンデルタール人の場合、加工された平たい石灰石が頭部のすぐそばに置かれていた。枕代わりだったのかもしれない。また、カメの甲羅や燧石(すいせき、火打ち石)で作られた工芸品も入れていた。 一方、ホモ・サピエンスの埋葬跡の近くには、何かを象徴するためと思われるものがいくつか発見されている。例えば赤い顔料は、地位や身分、信仰を表すために体や物に塗っていたと考えられる。また、遠方から運ばれてきた貝殻のビーズも、親族関係、身分、年齢、社会的なつながりを表すために個人が身に着けていたのかもしれない。
「洞窟は財産です」
当時のネアンデルタール人とホモ・サピエンスはどちらも半移動生活をしていたが、毎年同じ時期になると同じ洞窟に戻ってきていた可能性が高い。洞窟は貴重な住まいだったことから、その中や近くに死者を葬ることによって、その場所の所有権を主張し、境界線を示すしるしとしていたと考えられる。 この頃のヒト属は、資源や土地をめぐって互いに競争をしていた。「洞窟は財産です。同じ種同士で集まり、交流することによって、その場所を自分たちの縄張りとするのです」と、バルジライ氏は言う。 もし、ネアンデルタール人もホモ・サピエンスも、埋葬場所をしるしとして利用していたとしたら、両者が文化的な風習を交換していたか、少なくとも墓やしるしがどういう意味を持つかについての理解を共有していたと考えられえる。