ゲイの「結婚相談所」ってどんなところ?隠さざるを得ない社会で「安心して楽しめる」お見合いの形【いいふうふの日】
自分の至らなさを思い知る経験が何度もあった。中でも同性愛者に対して差別的な環境で働く会員の悩みを聞いた時のこと。自分なりに「社会は少しずつ変わっていますよ」と励ました。 「それでも僕の職場、見ている景色は絶対に変わらない。田岡さんに分かりますか」と返ってきた。「会員様が見ている社会と私が見ている社会は異なり、ひとりひとり置かれている環境、社会を知ることから始めなければいけないと襟を正しました」 「僕のことを知ろうとしてくれた」「嘘がない対応をしてくれた」といった評判が広がり、登録者数が毎年増えているブリッジラウンジ。それはきっと、当事者が置かれる実情に、誠実に向き合ってきたからだ。 田岡さんにとって一番嬉しいのは、カップルが誕生し、幸せいっぱいな笑顔を見せてくれること。特に胸に残っている言葉がある。それは「ブリッジラウンジに入会しなかったら、僕の人生は窮屈なものになっていたと思います」というもの。この仕事をして良かったと胸がキュッとなった。 「卒業」後も、連絡してくれる会員も多い。「彼と休みの日に公園やスーパーに行くみたいな、たわいない日常がすごく楽しくて」「ちょっと幸せ太りしちゃった(笑)」といった惚気話を聞き、「羨ましいなあって、ニヤニヤしちゃうんです(笑)」とはにかむ。 成婚カップルにインタビューし、幸せな様子を公式ブログで発信するのも、祝福の証だ。「私自身も、元気がもらえるんです!」
◆結婚相談所を名乗るのは「本気で目指しているから」
ブリッジラウンジが目指すのは成婚だけでなく、「ゲイの人ももっと幸せになれる未来」。だから当事者の置かれる実情の発信にも力を入れる。 コンサルタントの石垣桃さんは「セクシュアリティによる転職・移住」などをテーマに、会員らにアンケートを実施している。 根底には、寡黙で自己開示をせず、お見合いでも「お断り」が続いていた会員の存在があった。向き合う中で、「偽らない自分」を見せたことでいじめを受けたという過去を話してくれた。 石垣さんは「身を守ってきたその経験は、絶対に否定しません。ただ、偽ったまま関係を築くことは難しいと思うので、固まったカチコチの心を少しずつ溶かす準備を私としませんか」と伝えた。 「LGBTQについて社会は変わってきたと言われます。それに共感しつつも、会員様のお話とのギャップも感じていて。もっと実情を知ってもらうことが、生きやすい社会の一歩だと思うんです」 ブリッジラウンジを運営する中で、会員や周囲から、ほぼ必ず聞かれることがある。それは、「同性婚ができないのに、なぜ結婚相談所を名乗るのか」という問いだ。 田岡さんは「誰もが結婚できる社会を、本気で目指しているからです」と、まっすぐ答える。 これまで多くのカップルの笑顔を見てきた田岡さんには、何度も頭をかすめる言葉がある。それは「結婚できるようになったら、結婚式に呼ぶからね」という声だ。 「どうしてこんなに真面目に生きて、幸せを掴んだ人が結婚できないんだろうって、苦しくなるんです」。一歩ずつ、変えていこうと決めた。 だから企業として、結婚の平等の法制化を推進する「Business for Marriage Equality」に賛同。いずれはレズビアンに向けた婚活サービスも提供する予定だ。