アフターコロナとアフタートランプ 脳に対する「からだの逆襲」
サイバー戦争と文化力・「からだに気をつけて」
アフターコロナの時代において、テレワーク、オンライン飲み会、オンラインゲームなど、電子ネットワークによる仕事やコミュニケーションや娯楽がこれまで以上に進むことはまちがいない。しかしそれが一方的に、何の問題もなく進むとは思えない。電子的な脳の進化は、からだの逆襲による摩擦を生じ、破局を生じ、押し戻される。自然、野生、家族といった風土的身体的要素は、より強く要求されるだろう。 こういったソフトな都市化によってハードな都市のあり方は柔軟にならざるをえない。満員電車で朝は郊外から都心へ夜は都心から郊外へという通勤形態は緩和される方向だろう。工業化時代に非人間的なまでに最適化した都市と企業は、さまざまな意味で柔軟にならざるを得ない。 自国主義が簡単に終わるとも思えない。米中デカップリングは続く。しかしアメリカは大統領選に表れたように、国家と国民が必ずしも一体ではない。人種、宗教、言語、教育程度などによるグループ間の分断は、一時的に緩和されてもやはり進むだろう。また中国共産党と中国人も必ずしも一体ではない。特にウイグル、チベット、内モンゴル、香港などの地域では、国家と国民の分離、また他の地域でも経済格差などによる分断が進むだろう。アメリカと中国は、その領土の大きさからも、多様な風土の逆襲を抑え込むのに大変な力を必要とする、やや特殊な国家なのだ。政治権力は、そのためにも、外部に敵をつくろうとする傾向がある。 「からだの逆襲」としての部分的な軍事衝突になる可能性がないとはいえないが、現在の米中対立は、ファーウェイの問題などに見られるように、サイバー戦争の様相を呈している。また自由、民主、人権、法治などの社会的価値観をめぐる陣営化の様相も呈している。大きく見れば「脳の外在化競争」といっていい。そして長期的には「脳の活動母体としての文化」が重要な役割を担うことになるのではないか。 息子(脳)を気遣う母(文化)の手紙はいつも「からだに気をつけて」で結ばれるものだ。