意外な巨人新監督誕生? あのエースがFAで禁断の移籍へ!? プロスピ新作「スタープレイヤー」モードが凄い!【ゲーム遊戯】
「魂込めた!プロ野球ゲーム新登場!」 2004年3月25日発売、プロ野球スピリッツ第1作目のPS2ソフトパッケージを飾る中村紀洋(近鉄)や城島健司(ダイエー)を見ると時間の流れを実感する。そして、あれから20年が経った2024年10月下旬、個人的にクライマックスシリーズで応援していた贔屓球団が負けて、日本シリーズ観戦もキャンセル。あの金で何が買えたか? と浮いた交通費や宿泊代で、プレイステーション5とプロスピ新作を購入した。 『プロ野球スピリッツ2024-2025』(コナミデジタルエンタテインメント)は、シリーズ20周年目で初のPS5での発売。選手や球場、さらには観客の表情からビールの売り子まで、緻密な描写力が話題だが、今回のコラムはひとりのプロ野球選手になりきり、与えられたミッションをクリアしてレジェンド選手を目指す「スタープレイヤー」モードを紹介しよう。公式サイトで「新機能の人体エディットで自分の顔やフォームを細かく設定できる」と推されているように、初期設定で不気味なほどに容姿や打撃フォームの細部をカスタマイズできる。 とりあえず、身長201cmの筋肉質で日本のアーロン・ジャッジを目指すべく「真島ヒロト」を作成。両打ちで打撃フォームは現監督の阿部慎之助をベースにアレンジして、大卒の遊撃手で読売ジャイアンツからキャリアをスタートさせる。ポスト坂本勇人争いに参戦すべく、アピールポイントは「長距離砲」「圧倒的なパワー」「50m5秒台」を選択。ここは長打だけでなく、大谷翔平のようにホームラン王と盗塁王を狙える大型野手に育て上げたいところだ。 ◆ 一軍と二軍の差をリアルに実感 プロ1年目は、開幕二軍スタート。なぜか投手っぽい背番号21を与えられ、泥にまみれて一軍昇格を目指す日々だ。グラウンドの緻密な黒土の質感や、二塁走者として後ろから二軍調整中の田中将大の投球を見たときは軽く感動すら覚えた。だが、二軍の使用球場はすべて同じ(次作以降に改善期待)でひたすら代わり映えのない風景が続くので、ゲーム序盤は単調になりがち。とにかく夢の東京ドームを目指してハイペースで本塁打を量産しかない。チーム最多の第16号アーチを放った6月8日、ついに桑田真澄二軍監督から一軍昇格を言い渡される。 一軍合流後、休日に阿部慎之助監督に話しかけると居酒屋に誘われる……って死ぬほど緊張しそうなシチュエーションで檄を飛ばされると、直後のDeNA戦でウェンデルケンから「本塁打を打て」の無茶ぶりスパルタミッション。恐怖の阿部采配にビビるも、ここで真島は右翼スタンドへプロ初アーチとなる1号3ランをかっ飛ばす。 煌びやかな東京ドーム再現や横浜や甲子園の屋外球場の空やカクテル光線の描写も素晴らしく、正直コンシューマーゲーム機では、10数年前のPS3版あたりから画質含め完全にマンネリに陥っていた近年のプロスピでは出色の仕上がりだ。だが、これは新人王狙えるぞと思ったのも束の間、二軍とは明らかに質が違う一軍投手の球にまったくついていけない。打球速度や角度を表示するトラッキングデータが今作から実装され、現実の野球に近づいた分、打撃操作にもシビアさが求められる。打てない、マジでCSの巨人打線レベルで打てない。一カ月持たず二軍落ちすると、下ではホームランを量産する“二軍の帝王化”が妙にリアルだ。1年目の一軍成績は初本塁打以外1本のヒットも打てず、14試合で打率.050・1本塁打・3打点。対照的にイースタンでは30本塁打、75打点の活躍である。 初めての契約更改では、なんと1500万円から300万円ダウンの1200万円で屈辱のサイン。二軍でどれだけ打っても飯は食えない。実際のプロ野球選手と同じく、危機感を抱く。次はオレがクビになるんじゃないかという恐怖である。ここで理想を追い求めるのをやめて、いかに試合に出るかをシビアに考え、遊撃以外に右翼のポジション適性もつけた。使い勝手のいい選手となり監督の評価を上げていくしかない。選手との交友値がMAXになると相手の特殊能力をラーニング(継承)したり、練習経験値を得ることができるので、たまの休日行動日には同僚選手を誘い交流。練習後に丸佳浩や浅野翔吾といった野手陣と積極的に食事に出かけた。 ◆ 選手が監督の起用法に不満を持つ時…… そうしてプロ初の開幕一軍を勝ち取った2年目。真島は序盤から着実にヒットを積み重ね、出番を確保する。さらには動画クリエイターの女性と出会い、デートを重ねやがて彼女へ。こうなると、彼女優先で他の選手との交流が激減していく男の悲しい性。しかも彼女ができた途端、スターレベルが一気に6段階も上がる謎の恋愛優先仕様に翻弄されつつ、アイテムの特別練習チケットを限界値まで使用しトレーニング効率を上げ、レッドブル的な調子回復ドリンクを定期的に飲み続ける。 しかし、本塁打と盗塁が増えても、真島のレギュラー定着はなかなか遠い。スタメンと途中出場が半々だ。しかもチームは最下位に沈んでいる。こうなると、「監督はなんでオレをレギュラーで使わないのか」と首脳陣にも不満が溜まっていく。当初はひたすら圧倒的な画質に感動していたのが、ゲームをやり込む内に、外野が全員万波クラスの強肩で返球するため二塁打がいつもギリギリじゃねえか的な突っ込みどころも目につく(アップデートで改善期待)。 プロ2年目、2025年シーズン最終成績は、143試合、打率.274(414打数118安打)・24本塁打・62打点・22盗塁・OPS.808。途中出場が多かったため規定打席には届かず。それでも新人王を獲得するが、直後にチームに激震が走る。 ◆ まさかの監督人事にエース流出の世界線…… 巨人は首位広島と29ゲーム差の最下位に低迷すると、阿部監督が去り、なんと戸根千明新監督が爆誕。唐突なサプライズ人事に戸惑っていると、投手コーチは現役時代に巨人とは関わりのなかったロッテの元ドラ1唐川侑己が就任だ(※あくまでゲーム内でのフィクションです)。もうメジャー移籍でもチラつかせて(そういうゲーム内選択肢はないけど)年俸を大幅アップさせないとやってられないというわけで、こちらも契約更改でいきなり5年26億円を要求。すると、それはさすがにスルーされるも、単年で1億800万円アップの年俸1億2000万円提示と新たな「背番号7」を貰った。 なんだかよく分からない新体制で一気に1億円プレイヤーになった上に、ついでに私と結婚したいならもっと趣味を増やしてとか野球に全然関係ない無茶ぶりする彼女にも振り回され……なんて戸惑ったまま3年目が開幕。しかし、2026年の戸根巨人は怒涛の開幕ダッシュに成功して首位快走だ。結果が出ると、恰幅のいい戸根監督もすでに大監督の風格すら漂わせている気すらしてくるから不思議だ。前年の日替わり起用ではなく、不動の遊撃レギュラーとして1番もしくは3番でスタメン起用してくれるのでプレーしやすい。 真島は序盤から自チームの岡本和真や佐藤輝明(阪神)とホームラン王争いを繰り広げ、盗塁ランキングでも中野拓夢(阪神)に次いで2位につける好調ぶりで、オールスターファン投票でも中間発表でセ遊撃の首位を独走。彼女との関係も順調で、同僚のバルドナードが「この試合で盗塁を決めたら食事をおごる」と謎の提案をしてくるほどチームメイトとも仲が良い。月給とグッズ収入で毎月1000万円以上稼げるので、スポーツショップで能力がアップするバットやスパイクも片っ端から購入。順風満帆なプロ3年目だ。そんな真島の前に意外な天敵が現れる。 本拠地での阪神戦で背番号54の右腕に3打席連続三振を喫し、チームも完封負けを喰らうのである。コントロール抜群でスライダーのキレと精度も申し分ない。なんなんだこの投手は……驚異の新人なのかとユニフォームの背ネームを確認したら「SUGANO」。そうかスガノ君か……って菅野智之じゃねえーか! 巨人からメジャー移籍ではなく阪神にFA移籍している、とんでもない世界線で登場した虎のエース菅野。この巨人ファンの心を折る展開にリベンジを誓う真島であった―――。 AIがズンドコすぎて……じゃなくてサプライズ満載の「スタープレイヤー」だが、このまま数シーズン続けてプレーしてみたいと思わせるモードだった。あまりゲームの時間の取れない社会人でも、サクサク進める程よくユルい難易度である。一方で圧倒的なグラフィックの裏で、試合中の守備・走塁面はアップデートでの改善希望点も目立つ。それでも、『プロ野球スピリッツ2024-2025』を遊ぶために、プレステ5本体を買う価値は充分にあると思う。だって、今日から巨人戸根監督のもとでプレーして、阪神菅野と対戦できる異次元の野球体験ができるのだから。 文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)
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