「子どもの視点に立った調停をしてほしい」長期化する離婚・面会調停、当事者が家庭裁判所に望むこと #こどもをまもる
「子どもの心身の成長にコミットしたい」別居親の望み
民法の離婚後の子の監護に関する条文に、「面会及びその他の交流」について協議すべしという文言が盛り込まれたのは2011年。条文には「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」とある。 しかし、それから10年後の2021年度の面会交流の実施状況は、母子世帯で30.2%、父子世帯で48.0%。実施している場合でも、その回数は「月1回」が最多だ。これは「子の利益」を優先した結果なのか? 家事事件を多く手がける弁護士の梅村真紀さんは、「子の利益」を考慮することの難しさについて、こう話す。 「例えば、面会交流で言えば、『子の利益』につながる面会頻度を決めるべきなのですが、同居親の拒否感情が強い場合、回数を決めても守られないことが多い。守られないなら意味がないということで、家裁は『最低限、これくらいなら同居親も応じるだろう』という程度にしか出さない傾向があるのです。しかし、それでは別居親がつらい。だからといって、面会交流を増やすための調停を再度申し立てると夫婦間の葛藤がさらに高まることになり、面会頻度が減る危険性がある。悩ましいところです」
離婚した元夫婦の関係や子どもとの関係は一様ではないため、「子の利益」を一律に評価することは難しい。とはいえ、以前は親が離婚すると子どもは別居親と没交渉になることが「ふつう」だったが、1994年に日本が批准した子どもの権利条約では、子どもには両親から引き離されない権利があると認めている。つまり、特段の事情がない限り、離婚後も子どもが両親と交流をもつことは子どもの利益につながると考えられる。 沖田さんの望みは、父親として継続的に子どもと関わり、心身の成長にコミットすることだ。 「思い切り体を動かしたり、小さな冒険に出かけたり。もう少し大きくなったら仕事の話をしたり、社会問題について語り合ったりしてみたいです」(沖田さん) また、離婚にともない話し合わなければいけないことは、子の親権や面会交流だけではない。 「調停では、離婚するかどうかに始まり、慰謝料や婚姻費用、離婚するのであれば財産分与や年金分割についても話し合わなければなりません。これらは基本的に同時に進めていきますから、子について話し合う時間はどうしても限られてくるのです」(梅村さん)