「子どもの視点に立った調停をしてほしい」長期化する離婚・面会調停、当事者が家庭裁判所に望むこと #こどもをまもる
ところが、近隣のマンションに住んでいた妻が、子どもを連れて実家近くの現在の住所に引っ越した。そちらの家庭裁判所に管轄を移して調停を始めることになったが、コロナを理由に延期となった。子どもには2020年3月に2時間だけ会えたが、その後は面会できないまま。1年後にやっと、Zoom越しの面会交流が許された。Zoomをつなぐとき、沖田さんは「子どもが自分の顔を忘れていたらどうしよう、人見知りしたらどうしよう」と不安だったという。画面の向こうから「パパ!」とうれしそうに呼びかける姿を見て、ようやく安堵した。 その後も、面会交流の拡大をめぐる話し合いは折り合いがつかず、「子どもに会いたい」沖田さんと、「会わせたくない」妻の葛藤は大きくなっている。 調停委員も頼りなかった。 「調停委員はいい人で親身になって話を聞いてくれましたが、逆に言えばそれだけなんですよ。ぼくの味方をしてほしいのではなく、もっと子どもの視点に立って調停を進めてほしいのです」 このままでは一生子どもに会えないかもしれない。危機感をもった沖田さんは2022年4月、「月1回、第三者機関の付き添い型支援を利用して面会交流する」との内容に合意して、面会交流調停を終わらせた。内容には不満だらけだが、子どもに会えることを優先させた。 一方の離婚調停は不成立に終わり、裁判が進行中だ。争点は親権。 「離婚事由は『夫婦の気持ちのすれ違い』。浮気もDVも悪意の遺棄もないぼくが親権を奪われるのは納得がいかない。どちらかに親権者を決めなければならないのであれば、別居親と自由に交流させる寛容性をもったぼくのほうが、親権者としてふさわしいと主張しています」 しかし、沖田さんの主張はなかなか通らない。統計データによれば、令和になった今でも、離婚後の親権の約9割は母親が持つ。母性優先、「現状維持の原則」(今現に暮らしている親との暮らしを優先する原則)の考え方は根強い。