日銀・黒田総裁会見3月18日(全文1)必要な時点まで量的・質的金融緩和を継続
日銀から見て望ましい物価上昇か
テレビ東京:テレビ東京の大江と申します。よろしくお願いいたします。今の質問に関連することなんですけれども、今の日本の物価上昇、これは日銀から見て望ましい物価上昇、目指していた形での物価上昇なんでしょうか。おっしゃるとおり、エネルギー、そして食料価格というコストプッシュ型の物価上昇になっているところに、海外と日本の金利政策の違いによって円安が進むと、それはいっそうの輸入物価の押し上げということにつながります。こうした状況でも日銀は動かなくてよいと見ていらっしゃるのかどうか、ここをまず1点教えてください。 さらに、今回、景気判断については下方に修正をしていますけれども、物価は上がって、景気は下がっていくという、いわばスタグフレーション的な状況というのを先行き、警戒する必要が出てきているのかどうか、これについても教えていただけますでしょうか。 黒田:物価上昇、足元で生鮮食品を除いたところで0.6%というところであります。そうした中で、上昇要因としては、エネルギーとか食料品の国際商品価格の上昇ということが非常に大きく効いているわけでして。
好ましい物価上昇ではない
一方で、大幅な金融緩和の中で企業収益が大幅に上昇し、拡大し、賃金も上がってきているといったこと、そうした中でコロナの下ではありますけれども、基調的なアンダーライングな物価上昇要因が少しずつ上がってきていたことは事実なんですけど、それは非常に良いことなんですけども、他方で最近のかなり急激な輸入物価の上昇、これは国際的な商品価格の上昇によるものなんですけども、それはわが国が先進国の中でも資源輸出国っていうのは、かなりあるんですけれども、そういう国と違って資源輸入国ですので、交易条件の悪化とか、そういうことでマイナスになる、そういった物価上昇ですので、この点は好ましい物価上昇ではないというふうに思っております。いわば、コストプッシュ型のですね。 ただ、その要因の中で円安が影響している部分っていうのは極めて小さくて、基本的にこのウクライナ紛争が激化する前から国際商品価格が少しずつ上がってきていましたけども、さらにこのロシアのウクライナ侵攻によってエネルギー価格とか食料品価格なんかがかなり急激に上昇しているということで、これは円安による要因というものはわずかであって、基本的には国際商品市況、ドル建ての国際商品市況の上昇によるものだというふうに思っています。 その部分は先ほど申し上げた、それによる物価上昇というのは好ましくないということではあるんですけども、国際商品市況の上昇による影響っていうものは、輸入国としては避けがたいところがありますので、そこの状況は十分注視していく必要があると思いますけれども、その大半はさっき申し上げたように、コロナからの回復の中で、商品市況が上がってきたところへ、このロシアによるウクライナ侵攻で急激に上がってきていると。そこが影響しているっていう点は大きいと思いますし、それはもちろん日本にとって好ましくない輸入価格の上昇であるというふうに思っております。 なお、為替の変動の場合に、従来からいろいろな分析で申し上げているとおり、輸入価格の上昇もありますけど、輸出価格の上昇もあると。それから、輸出数量効果はもう最近は非常に小さくなっていますけれども、他方で、わが国の企業が海外で生産をして、その収益を本社に送金されるわけですけれども、その円建ての金額というのは円安によってむしろ拡大するわけですね。ですから、われわれの分析で申し上げているとおり、全体としてはこのファンダメンタルズを反映して安定的に推移している中で円安になることは、むしろ日本の経済・物価にとってプラスになるという、基本的な構造は変わってないというふうに思います。