日銀・黒田総裁会見3月18日(全文1)必要な時点まで量的・質的金融緩和を継続
スタグフレーションにはならないと思う
そこで、この国際商品市況の急激な上昇とか、その背後にあるロシアのウクライナ侵攻による貿易の影響とか、そういうことがスタグフレーション的なことをもたらす恐れはないかっていうことですけども、現時点でそういう恐れが日米欧についてあるとは思っていません。ご案内のとおり、欧米の経済成長率は最近時点でも依然として、潜在成長率をかなり上回る状況が続いていますし、想定、予想されているっていう状況ですし、わが国の場合も潜在成長率をかなり上回る成長が続くというふうにみられておりますので、スタグフレーションということにはならないと思いますけれども、他方で確かにこういった商品価格の上昇というものは、特に日本のような資源輸入国にとっては好ましくないことであると。 ですから、それの経済・物価への影響というのも十分注視する必要があるというふうに思いますけれども、スタグフレーションになるというふうには欧米も日本も、そういうふうになるとは思っておりません。
円安の影響が大きくなった場合、どう対応するのか
朝日新聞:朝日新聞の津阪です。総裁、すいません、ちょっと同じような質問になってしまって恐縮なんですが、先ほど輸入物価の上昇に円安が与える影響は今のところ小さいというお話でしたけれども、先ほど来お話にあるように、FRBもBOEも今年これから利上げしていくという中で、円安圧力というのはさらに強まっていくと思われます。そうした中で、先ほど総裁がおっしゃられた、円安の要因が輸入物価に与える影響が大きくなっていったときに、日銀としてなんらかの対応を検討する余地というのはあるんでしょうか。 黒田:そもそもそういうふうになると思っていません。よく金利格差と為替レートの関係というのを、もちろん全然関係ないとは言いませんけども、いろいろな実証研究でもそんなに相関関係がはっきりしているっていうわけでないということも明らかになっていますし、今の時点で欧米の中央銀行が金利を引き上げていくというのは、それぞれの国の物価状況、インフレが米国の場合は8%近い、ヨーロッパの場合は6%近いというインフレで、わが国の場合は1%未満というところですので、そういったところで金利を上げていく、緩和の程度を弱めていくというか、正常化していくというのは、それは当然のことであり、それらの経済の成長をむしろ持続させる意味でも、非常に重要だと思いますので、それはそれで当然なんですけども、だからといって日本が金利を上げる必要はまったくありませんし、そうした下で金利格差が拡大したら直ちに円安になるということもないと思いますし、少なくとも、ご承知のようにこの10年というか、かなりの期間にわたって日米欧の通貨の間の為替というのは比較的、かつてのように大きな変動はなく、安定的に推移しているわけですけども、これはECBの元の総裁のトリシェ氏とか、その他、経済学者の方も言っておられますけども、日米欧の中央銀行が2%の物価安定目標を掲げて金融政策を運営しているということが、これら三極の通貨の間の為替レートを比較的安定的に維持している1つの要因ではないかというふうにもいわれております。 いずれにいたしましても、当然のことながら為替レートというのは経済・物価に影響を及ぼしますので、当然よく見ていくつもりではありますけれども、ご懸念のようなことが何か可能性が高いとか、それによって日本のインフレが非常に高まっていくというふうにはみておりません。 【書き起こし】日銀・黒田総裁会見3月18日 全文2へ続く