北陸新幹線「小浜・京都ルート」 京都府市は事実上反対か? 自民国会議員も懸念、市長「地下水 = 京都文化を支えてきた」の指摘も
京都府内で高まる反対の声
こうしたなか、松井市長や西脇知事はルートの是非に関して明確な意思表示をしてこなかった。西脇知事の就任は2018年、松井市長は2024年。2016年に選定された小浜・京都ルートは就任前からの決定事項で、口を挟みにくい一面もあったのだろう。 だが、京都府内の不安はトンネル工事の地下水への影響、大量に発生する建設残土、残土に含まれる重金属問題、ばく大になると見られる地元負担など多岐にわたる。小浜・京都ルートに対する反対の声は沿線住民だけでなく、地方議会の議員や経済界からも出ている。 12月に入っても京都府酒造組合連合会が地下水に影響がないルートにするよう国などに働きかけを求める要望書を京都府市に提出したほか、府議会にはルート再考を求める請願が元自民党府議から提出された。 石破茂首相は衆議院本会議で日本維新の会の前原誠司共同代表の代表質問に「速達性や利便性などを考慮し、小浜・京都ルートに決まったと承知している。ルートを絞り込んだうえで1日も早い全線開業を目指す」と答えたが、京都府内で反対の声は高まる一方。松井市長と西脇知事が懸念を伝えたのは、地元の声を受け止めた側面もあるとみられる。
出口の見えない混迷に
整備新幹線のルートは与党の判断に基づき、国が決定する。着工条件は ・安定的な財源見通し ・収支採算性(営業主体の収支改善効果が30年平均でプラス) ・投資効果(費用便益比が1を超す) ・営業主体となるJRの同意 ・並行在来線経営分離についての沿線自治体の同意 である。だが、松井市長は12月の定例記者会見で地下水への影響、建設残土処分、工事による交通渋滞、地元の財政負担という四つの懸念を挙げ、 「説得力のあるデータや根拠で安心できると確信を与えていただかなければ、私は同意できない。駅を造る当該市の市長がどういう判断をするか、想像してほしい」 と述べた。 懸念が解消されなければ反対に回る可能性があると受け止めてもおかしくない厳しい発言だ。地元の自治体が反対の立場を取れば、事業の推進は難しい。年内に詳細ルートを決め、2025年度に着工したい意向を持つ与党整備委員会には、高いハードルになる。 しかも、トンネル工事には道路の陥没や井戸の水枯れなど想定外のトラブル発生が少なくない。特に深さ40m以上の大深度地下工事となると、 「掘ってみなければ影響はわからない」 と考える専門家もいる。地元の財政負担軽減には財務省の抵抗が予想される。松井市長や西脇知事を納得させられる説明ができるのだろうか。与党整備委員会はあらためて会合を開き、対応を協議するもようだが、自民党国会議員のなかには 「京都府市が事実上、反対に回ったように見える」 との声も聞かれた。大阪延伸を巡る混迷はさらに深まり、出口が見えない。
高田泰(フリージャーナリスト)