子どもに心臓マッサージはできるの? 小学館の雑誌「幼稚園」の付録には紙のAEDも…小さいうちから心肺蘇生法を学ぶ意義
「教えて!ドクター」の子育てQ&A講座
「教えて!ドクター」プロジェクトの活動を続けている佐久総合病院佐久医療センターの小児科医、坂本昌彦さんが「正確でわかりやすい子どもの健康情報」を伝えます。 【図解】女性が倒れた! AED使用、ためらうかも…服を脱がせない方法も
今月9日の「救急の日」を含む1週間は「救急医療週間」でした。救急に関する意識を高めるための活動が今年も全国各地で行われました。心停止などの緊急事態はいつ誰に起こるかは予測できませんが、そんな時に重要なのが心肺蘇生法(CPR)です。特に、心停止が発生した場合、すぐにCPRを行うことで命を救える確率が大きく向上します。今回は、CPRの重要性とその教育に関する最近の取り組みについて紹介します。
院外心停止の生存率は非常に低い
病院の外で心臓が不意に停止してしまう「院外心停止」のうち、一般市民に目撃されたケースは日本で年間約2万8000人いるとされています (1) 。突然、倒れてしまった場合、そのままでは血液の循環が止まり、脳に酸素が行き渡らなくなります。その結果、脳に深刻なダメージが生じ、最悪の場合、命を落としてしまいます。実際、心肺蘇生を施されなかった場合の1か月後の生存率は6.6%と非常に低いです (1) 。しかし、心停止の瞬間に周囲の人がすぐに心肺蘇生法を実施すれば、生存率は2倍以上高まることが分かっています (2) 。CPRは血液を循環させることで脳を守り、医療機関に到着するまでの時間を稼ぐ非常に重要な技術です (3) 。
小学生から心肺蘇生を学ぶ効果は非常に高い
多くの研究によって、小学生の時から心肺蘇生法を学ぶことが、将来の緊急時に非常に有益であることが確認されています (4) 。早い段階からCPRを習得することで、いざという時に冷静に対応できる可能性が高まります (5) 。また、子どもがCPRを学ぶことで、彼ら自身が家族や地域社会にその知識を広める役割を果たすことも期待できます。CPRの知識は命を守るために必要なもので、その普及は地域全体の安全性を高めると言えます。
各国で進む小学生のCPRトレーニング
実際、子どもたちが心肺蘇生法を学ぶことの効果は、韓国などの国々で確認されています。例えば、韓国では小学生を対象にCPRの教育が行われ、その結果、トレーニングを受けた子どもたちのCPRに関する知識や態度、自信が大きく向上しました (6) 。日本でも、学校教育の一環として心肺蘇生法を教える取り組みが始まっています。京都市子ども保健医療相談・事故防止センター(愛称「京(みやこ)あんしんこども館」)では、2022年度から小学4~6年生を対象にCPRの講習会を開催し、昨年度は8回実施して227人の子どもたちが参加しています。