なぜ大病院に患者が集中? ―地域医療構想に沿った患者の受診方法とは
日本では2025年には団塊の世代が後期高齢者である75歳を超えるなど、急速な高齢化が進んでいます。これに伴い増加する医療ニーズに対応すべく、国を挙げて進められているのが「地域医療構想」です。 地域医療構想では、地域の病院ごとに役割分担を明確にして効率的な医療を行うことになっています。これに従うと、体調に異変を覚えた患者は 1. まずは地域のクリニック(かかりつけ医)を受診する 2. より専門的な医療が必要な場合は高度急性期や急性期(病気になり始めの時期)の病院を紹介され、そこで医療を受ける 3. 回復期(急性期の治療が終わり回復を図る時期)や慢性期(長期にわたって入院での療養を行う時期)になったらその医療を行う医療機関で医療を受ける といった行動が求められることになります。 しかし現在、多くの地域で 2. の急性期の病院に患者が集中し、さまざまな弊害が起きています。 実際にどんなことが起きているのか、何が原因なのか、どんな対策が求められるのか、東京都府中市の都立多摩総合医療センターの病院長である樫山 鉄矢(かしやま てつや)先生に話を伺いました。
◇外来患者数の増加は想定以上
当センターは東京都多摩地域に位置する高度急性期病院です。同じ建物に都立小児総合医療センターがあり、また隣接する都立神経病院の外来機能も担っています。 当院では開院前に地域の医療ニーズを予測し、1日あたり1500人の患者さんが紹介や外来で来院されると想定して設備を整え、スタッフを配置しました。しかし2024年現在、日によっては1日に2000人以上の患者さんが来院されます。当初の想定より外来患者数が30%以上も多い日が月に何度もある、というのが現状なのです。
◇待ち時間延長や電話混雑にも影響
これにより、当院では、予約の電話がつながりにくくなる、会計での待ち時間が長くなるなど、患者さんにとって望ましくない状況が頻繁に生じるようになっています。また、予定外の残業につながるなど、スタッフの働き方にとっても困った問題になっています。 このような状況になった要因の1つとして、患者さんの大病院志向や専門医志向があると考えています。