BMIで健康度は測れない、むしろ害になることも、体重より気にすべきこととは
「健康的な体型は1つではありません」と専門家、より優れた代わりの指標は
「BMI(ボディ・マス指数、体格指数)」は、1970年代に健康な体重の指標として導入されてから診察室やジムで使われつづけてきた。けれども専門家たちは10年ほど前から、BMIの妥当性を再検討しはじめている。健康状態とBMIとの関係は複雑で、総合的な健康状態の指標としては必ずしも適切ではないかもしれないというのが理由だ。 ギャラリー:炎症を抑える食べ物とは、体脂肪は炎症にも影響 写真6点 BMIは、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割って計算できる。太り過ぎとされる分かれ目は25だ。世界保健機関(WHO)の基準ではBMIが25以上を「過体重」、30以上を「肥満」としており、日本肥満学会の基準では25以上を「肥満」としている。 実際、いくつかの研究では、BMIが高い人は、心血管疾患や、2型糖尿病などの内分泌疾患のリスクが高いことが分かっている。 しかし、健康に悪影響を及ぼす要因は体重だけではないかもしれない。BMIが高い人が抱く恥の意識や「肥満」というレッテル貼りも健康状態の悪化につながるおそれがあることが、研究で示されている。 BMIが高いだけでは必ずしも死亡率が上がるわけではないとする研究もある。スリムでも不健康な人はいるし、BMIが25を超えていても他の健康指標が良好な人もいると、米ハーバード大学医学大学院の准教授でマサチューセッツ総合病院の肥満症専門医であるファティマ・スタンフォード氏は言う。 「BMIは、ある人の健康状態をそれほど正確に予測するものではありません」と、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学教授であるジャネット・トミヤマ氏は言う。 ではなぜ私たちは今でもBMIに頼っているのだろう? 総合的な健康状態の指標として、もっと良いものはないのだろうか?
なぜBMIを使い続けるのか
1830年代、ベルギーの統計学者ランベール・アドルフ・ジャック・ケトレーは、標準体重の指標という概念を思いつき、「標準的な男性」の理想的な体重の指標を数値化しようと試みた。 1950年代になると、生命保険会社が、個人の体重を、身長、年齢、性別が同じ人々の平均体重と比較することで、その人の体脂肪の量(と死亡リスク)を推定するようになった。そして1970年代、生理学者のアンセル・キーズが、主に中年の健康な白人男性約7000人についての研究結果を発表し、BMIの計算式が誕生した。 BMIはその後、子どもやティーンエイジャー向けの尺度が作られたり、より最近の人口データに基づいて肥満判定の基準が調整されたりしたものの、基本的な計算式は変わっておらず、男性にも女性にも同じ式が使われている。 BMIが今でも広く使われている理由の1つは、比較的測りやすく、特別な訓練を受けていない医療従事者でも利用しやすいからだと、米メイヨー・クリニックの医師で内分泌学者のエレアナ・デ・フィリピス氏は言う。 またスタンフォード氏は、BMIが極端に低かったり高かったりする場合は健康問題がある可能性を示す指標となりうるが、25~30程度では、他の健康指標なしでは解釈が難しいと言う。