演劇のある憩いの場。『座・高円寺「演劇資料室」』。
東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「こ」は高円寺へ。
街ごとに、市民の憩いの場となる場所がある。どんな人に対しても開かれていて、居心地がよく、賑わいと楽しさがあるところ。高円寺北口を5分ほどの杉並区の公立劇場『座・高円寺』もその一つだろう。 東京五十音散策 高円寺③
2009年にオープンしたここは、舞台芸術の創造と発信、杉並区の地域に根ざした文化活動の拠点として設立された。建築は『せんだいメディアテーク』や『多摩美術大学図書館』を手掛けた建築家・伊東豊雄によるもの。優美で重厚感のある螺旋階段と、サロンのような広々したそれぞれのフロアの空間。近未来感のある不思議な水玉デザインの壁がオリジナリティがあって素敵だ。建物は、舞台や客席を変形することができる小劇場(座・高円寺1)と、一般の人が申込制で自由に使用可能な区民ホール(座・高円寺1)、「東京高円寺阿波おどり」の普及振興と、ダンスやパフォーマンスの上演もできる「阿波おどりホール」という3つの個性的なホールを構える。
演劇や舞台鑑賞・練習の目的がなくても大丈夫。ギャラリースペース「Gallery アソビバ」での展示や、カフェ「アンリ・ファーブル」で食事を楽しんだり、座学をしたりする人たちもいて、落ち着きあるゆったりした時間が流れていた。
ここで特におすすめしたいのが、3Fの「演劇資料室」。現代劇の戯曲とそれに関わる資料の収集・保存といった「アーカイブ」の運営を目的としている場所だ。「日本劇作家協会」の協力のもと、現在活躍中の劇作家の戯曲や上演台本を中心に収集しており、他にも『座・高円寺』での上演台本はもちろん、シェイクスピアやブレヒトなど世界各国の名作戯曲から日本の演劇・現代劇にまつわる書籍、『悲劇喜劇』『テアトロ』といった演劇がテーマの雑誌などが揃う。約7,300冊(2023年末時点)が収納されている閉架式の書庫から、読みたい資料を申請すれば無料で利用可能だ。館外への貸出は行っていないが、3階のフリースペースや2階のカフェ「アンリ・ファーブル」で読むことができる。