消えてゆく本屋さん 国も警鐘鳴らす 背景には「薄利多売」な慣習も
「秋の読書推進月間」(24日まで)中とあって、本の魅力を伝えるイベントなどが各地で行われている一方で、全国で書店の減少が止まらない。毎年、数百単位で数が減り、全国の自治体の4分の1以上が書店空白地帯という危機的状況だ。本や雑誌の販売を通じて情報発信を担い、思わぬ本との出合いを提供する書店。その衰退に国も危機感を抱き、経済産業省の書店振興プロジェクトチームは10月、課題をまとめて公表、「我が国の存立基盤や競争力を大きく左右することにもなりかねない」と警鐘を鳴らしている。 【図でみる】出版業界の流通システム 日本出版インフラセンターの調査によると、令和5年度の全国の書店数は1万927店で、20年足らずの間に約7700店も減少している。出版文化産業振興財団の調べでは、書店ゼロの自治体は今年8月末時点で全体の27・9%に上り、「市」に限ると15道県の24市が該当する。 同財団によると奈良県宇陀市もその一つ。市内の三好俊輔さん(45)は、毎週のように通っていた大型書店が4年前に閉店した衝撃が大きかったという。趣味の車やアウトドア雑誌、自己啓発本などを〝渉猟〟するように店内を見て回るのが楽しく、書店に行くときは3人の子供にも声をかけていたが、「今はそれができない」と嘆く。 本が必要な時は、車で20分ほどかけて同県桜井市内の書店に出かけるが、「ふらっと書店に立ち寄るということがなくなった」。インターネット書店も利用するが、「ほしい本以外は買わないので、パラパラとページをめくって思いがけない本との出合いがなく味気ない」と語る。 こうした状況を経産省の課題報告書では、特に次世代を担う子供たちが、「書店を知らず、新たな本に遭遇することなく、多様な思考に触れることなく、成長していくことを強く懸念する」としている。 書店減少の背景には複雑な事情が絡み合う。人口減少、インターネット書店の台頭といった社会変化に加え、影響が大きいのは電子書籍の普及だ。雑誌や紙の書籍市場は縮小傾向にあるが、漫画を中心とした電子出版市場は拡大しており、書店で本を買う必要性が薄れている。 また、主力商品だった雑誌の苦境も続く。出版市場がピークを迎えた平成8年、雑誌の売り上げは書籍の1・4倍に上ったが、28年に逆転。ネットに無償の情報があふれたことで雑誌の価値が変化し、休・廃刊も相次いでいる。